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会員サービス事業

2022.07.08 2022年東三河地域問題セミナー 第1回公開講座

1.開催日時

2022年7月8日(金)14時00分~16時30分

2.開催場所

豊橋商工会議所 4階 406会議室

3.講 師

株式会社クレアン 総合企画グループ グループマネージャー 安藤 正行氏

4.テーマ

「SDGsを企業経営、自治体・地域の活動にどう組み込んでいくか」

5.参加者

20名

講演要旨

株式会社クレアンというのは「Createur-Entrepreneur(創造的起業家)」というフランス語が起源となっている。代表者は薗田という女性が、創業以来社長を務め、来年35年目を迎える。創業の地は大阪であるが、後東京におけるビジネス規模が拡大し、2006年くらいに本社を東京に移した。事業内容は主にサステナビリティのコンサルティングで、従業員は38名、過半数は女性で、サステナビリティの分野に関心を持っている優秀な女性社員が多くいる。

サステナビリティの統合経営コンサルティングを説明する。普通の経営コンサルティングは売上と利益、株価みたいな話を中心に、財務的パフォーマンス向上による企業の価値創造を目指す。サステナビリティの統合経営コンサルティングでは、売上や利益といった企業の価値創造に加えて、環境や社会への配慮、その価値も毀損せず創造し、両立させる経営ということで統合経営と呼んでおり、その推進のためのコンサルティングを行っている。当社はサステナビリティの経営コンサルタントを始めて22年になり、多くのノウハウがあり、要望に応じて大体のことは支援が可能である。また、自治体向けの支援サービスも提供しており、多くの企業と付き合いがあり、課題に対して協力するパートナーを紹介するマッチングサービスも行っている。

SDGsは17のゴールがあり、国連の場で2015年の秋に193か国が署名して、世界共通の目標となった。先進国以外の国も含めた世界中の国が賛同したことで一躍有名になり、日本政府も、推進本部を立ち上げて、トップは首相がやっている。最後の17番の目標は全体を包括するものだが、それ以外は、経済、社会、環境という3分野に分類され、サステナビリティの世界ではトリプルボトムラインと言われる。経済だけではなく、社会や環境まで対象を広げており、SDGsウェディングケーキと言われる図で説明すると、経済の目標は8、9、10、12の4項目、社会の目標が1、2、3、4、5、7、11、16の8項目、環境の目標が6、13、14、15の4項目となる。実際にSDGsを推進するにあたっては、SDGコンパスというのがあり、企業が取り組むときのガイドライン、手引きで参考になる資料である。

サステナビリティ経営とかサステナビリティ活動は、対象という意味ではこれまでの経済だけではなく、その周りにある社会や環境も大切な要素である。サステナビリティ自体は中長期の話であり、10年、場合によっては30年スパンで長期的なビジョンを掲げて検討することになる。

当社のサービスメニューはSDGコンパスのプロセスに沿って紹介している。コンサルティングにあたっては、ヒアリングから現状分析を行い、優先課題を選択・決定する。方針や計画に落とし込み、目標を立てて、KPIを作成。活動を1周させて1年後に評価した上で改善するというPDCAを回す仕組みをつくっていく。併せて情報開示を社内・社外に対して実施、セットとし、企業が活動サイクルを回していくことを支援している。

SDGsの中でも、現在中心的に議論が進んでいる分野について、環境、社会の側面から1つずつ取り上げる。まず環境については、気候変動対応が挙げられる。2020年の10月、当時の菅首相が2050年までのカーボンニュートラルを宣言した。COP26が昨年イギリスで開催されたが、毎回日本は化石賞を受賞するなど、環境問題とか、気候変動問題、地球温暖化問題に真剣ではないと言われ続けている。2020年の発表後も同様に言われ続けており、実際の政策パッケージが本当にそうなのかを疑われ、評価されていないという現実がある。世界を相手にするトヨタ、ソニー、日立など主要な大企業は、日本政府より早い段階から危機感をもって対応し、2050年におけるカーボンニュートラルを宣言していた。

今年の4月に東京の株式市場が市場の区分が、プライム、スタンダード、グロースという枠組みに変わった。プライム市場に登録するためにはTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が求めているものと同等の情報開示をしないといけないということがあり、気候変動への対応に関して自社にどのくらいリスクがあるのかについてシナリオを創り、会社にとって影響がある分野をしっかり認識した上で、どういう対応をするのか情報開示が求められ、必要に迫られて企業が対応した。これにより、気候変動リスクを経営陣がしっかり考える機会が生まれ、施策を打つきっかけになったと思う。

社会の側面でいうと、人権問題として、日本の「外国人技能実習制度」に最近注目が集まっている。日本には現在、外国人技能実習生が35万人規模でいて、勤務先は中小企業が中心で、比較的単純労働で働かれている場合も多く、帰国後役立つ技能があまり身につかないケースもあるとされている。また、安い賃金で長時間、休みもなく働かされる、安全でない職場で働かされるようなケースもあり、場合によっては行方不明になってしまうなど多くの問題が発生している。よって、この制度自体が人権問題ではないかという指摘を受けている。

当社も参画して「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム」という枠組みを去年立ち上げ、多くの企業の賛同を得て、救済メカニズムや問題対応窓口の設置など、問題解決をするためにどうするのかということをパイロットプロジェクトとしてスタートした。円安が加わって外国人が日本で働くメリットが感じられなくなっていることもあり、人権問題として重要であるとともに、企業の存続にもかかわるような労働力問題になることを危惧している。他にも日本はジェンダーギャップ指数で156か国中120位ということで、男女の給与格差、政治家の数の格差、いろいろなもので先進国最下位レベルである。事実としてこの状況を知った上で、どうするか考える時期であると思う。

SDGsの先進的取り組み事例として日立製作所を紹介する。前会長の中西氏が経団連の会長をされていたときに経団連の中でSDGs推進の旗振り役として率先して熱心に取り組まれ、日立の経営戦略上SDGsを主要な内容として位置づけて推進され、参考になる。気候変動対では、Climate Change Innovatorになるということを掲げ、ITからインフラを含めて総合的に、自分たちはこういった事業を通して社会貢献していくということを宣言し、1年に1度、活動の進捗報告を行っている。

最後に自治体の取り組みということで2つ紹介する。熊本県の山都町はSDGs未来都市に選定されている。山都町はもともと40~50年前から有機農業の発祥の地と言われ、有機農業を核とした持続可能な町になるための施策を実施している。人口1万6000人くらいで農業が中心、最近は害獣被害が多くあり、イノシシやシカを獲るということで猟師を雇ったり、ジビエ工房をつくったりしている。有機農産物とジビエ肉を合わせて東京のレストランに卸すということなどを、当社はマーケティングの側面から支援している。

次は兵庫県の豊岡市。女性が職場で自分らしく輝ける環境をつくりましょうというような戦略を立て、ジェンダーギャップを町全体で解消しようと豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略というのを立てるということで、その作成ワークショップを当社が支援した。豊岡市は若い方が大学とか進学の際に市外に出た後、男性は2人のうち1人戻ってくるが女性は4人に1人しか戻ってこない、どうしてといったことからデータや声を収集する中で、女性が生きやすい環境になってないんじゃないかと考えて目標を掲げ、進めていたものである。そのときにつくった資料、これが良くできていて、今後同じことを進めたい自治体にとってモデルになると思うので、ぜひ参考にしていただけたらと思う。

ワークショップ
東三河地域の今後のありかたについて思う姿を個人ワークで書き出した後、グループ内及び講師と意見交換を行った。

 

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