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広域連携事業

2022.09.30 第63回研究交流会

1.開催日時

2022年9月30日(金)14時00分~16時00分

2.開催場所

豊橋商工会議所 406会議室

3.講  師

東海大学海洋学部 海洋理工学部 航海学専攻 教授 合田 浩之 氏

  テ ー マ

「海運ロジスティクス変動と港湾に期待される役割
          ~完成車・コンテナを題材として~」

4.参加者

37名

講演要旨

【海上コンテナ運賃高騰の背景にあったもの】
世界経済の変化として、90年代から2010年くらいまでというのは、先進国から中国に世界の工場が移っていき、それまで先進国の中の工業団地と大都市の間をトラックで運んでいたような荷物が、全部海上コンテナに移ったため、海上コンテナ輸送の二桁成長が続いていた。そのため船会社は新規造船やコンテナの新規作成に積極的であった。しかしリーマンショックでマイナス成長となり、また丁度、その頃で中国への工場の移転の時代が終わり、コンテナの需給バランスが崩れて船会社は大きな危機を迎えた。

船会社は米中対立やヨーロッパの景況感の悪化から2019年と2020年は世界的に不景気で荷動きのマイナスを予測していた。リーマンショックの後の経験で、荷物が減れば船が余ることを学んでいたため、コンテナ船の新規造船を発注するのを止め、借りている船は返却し、コンテナの新規作成も止めて係船を増やすなど需要減少に備えていた。

ところが、コロナが蔓延し、世界中の人が巣籠もりをした。そこで何が起こったかというと、家の中で楽しむための物資の需要が世界的にものすごく高まった。中国で生産されたものが全世界に運ばれる、空前の荷動きの増加が起きた。マイナスになると予想していた物量が大きくプラスに反転した。急速な需要増加に応えようと船を稼働したが、コロナによる港湾労働者やトラック運転手の不足もあり、コンテナが滞留したことにより、さらに需給ギャップが拡大、運賃が高騰することとなった。

【ロシアによる特別軍事行動の影響について】
次にロシアによる特別軍事行動の影響であるが、ロシアとウクライナは小麦等の穀物の約13%の供給元だと言われている。穀物は常に流通在庫が生産量20%ぐらいあり、ウクライナの黒海沿岸あたりから出なかったとしても代替地から補われる。ウクライナの穀物は北アフリカや中東あたりに流通していたが、さらに遠いところから運ぶようになるため、船会社的には同じ荷物を長距離から運ぶこととなる。27ページのグラフは2022年の不定期船(BDI)市況であるが、戦争開始後これが大きく上がった。但し(BDI)は穀物や石炭より鉄鉱石の比重が大きいため、中国の影響で鉄鉱石の需要が下がり最近の足元は落ち着いている。タンカー市況(WS)は戦争開始後上昇傾向で、ロシア原油が盛んに買われていることも影響している。ギリシャの沖合あたりで積み替えをするなど途中で転売をされ、あちこちへ流れている。コンテナはロシア向けの物量は大したことがない。一部各地からロシアに向かっているコンテナが、ヨーロッパの主要港であるハンブルグなどに滞留しているものはあるが、全体から見ると大きい話にはならない。ロシアとウクライナの件については、全面戦争にならない限りに船会社に大きな影響はないということである。

【自動車船ターミナル・コンテナターミナルとして求められるもの】
自動車の海上輸送台数は2020年の1100万台ぐらいから2025年の1400万台ぐらいまで緩やかに伸びている。これは全車種であるが、台数の桁が違うが、ものすごい勢いで電気自動車の海上輸送が伸びており、また伸びるだろうと予想されている。EVのシェアを計算してみると2020年は1%だったのが、5年後には、6.45%になる。

大手船会社のワレニウスは、ベルギーのゼーブルージュ港において、ターミナルで使用する電気を再生可能エネルギーで賄っている。ここでは自動車会社などの荷主が求めているため、各船会社が風力発電を建設したりしている。これからEVが増えていくと、港の充電設備が必要になり、荷主からはその電気がクリーンかどうかを問われるため、再生可能エネルギー由来の電力調達が必要になる。また、ハイブリッドのLNG船の導入やバイオ燃料で走るタグボートと専従契約を結ぶなど、船のオペレーションに関して、脱炭素・低炭素・カーボンニュートラルを極限まで進めようとしている。

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