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広域連携事業

2024.03.08 第67回研究交流会

1.開催日時

2024年3月8日(金)14:00~16:00

2.開催場所

豊橋商工会議所 4階 406会議室

3.講  師

日本海事新聞社 執行役員編集局長 幡野 武彦 氏

4.参 加 者

30名

  ◎テーマ

「2024 年のサプライチェーンとコンテナ輸送の今後」

講演要旨
 コロナ禍においてコンテナ輸送に何が起こったのかというと、巣ごもりにて需要が非常に増大する一方、供給が減って混乱し、運賃が高騰して大きな変化が生じた。アジア北米航路のコンテナ荷動きを見ると、コロナ禍前までそれなりに一定の貨物量はあったが、コロナ禍において非常に貨物需要が増大した。コロナ禍が発生して一時的に貨物需要が急減したが、ロックダウンが起こり物の需要が一気に増大、それまでと比較して2割以上貨物需要が伸びていった。貨物需要が伸びる一方、コロナ禍によって労働者が職場に行けなくなり、港湾で人手不足が発生、ターミナルや鉄道、トラックも遅延して貨物が港に着いたが処理できないということで作業が滞ってしまい、増えた貨物を処理できなくなり混乱が生じたというのがコロナ禍のサプライチェーンの目詰まりである。
 結果的にこれだけ混乱してどうなったかというと、海上コンテナ運賃が非常に上昇したのは皆さんご承知の通りかと思う。コロナ禍前までアジアからアメリカ西海岸までのコンテナ運賃は、だいたい1,500ドルから2,000ドルぐらいであったが、2020年の6月以降荷動き量が増えるにしたがって運賃も上昇し、2021年の夏から秋にかけて1万ドルを突破するような状況になった。平均で2,000ドルから1万ドルになったので5倍に高騰したのである。コロナ禍によってこれだけ海上運賃が高騰したというのが、歴史的な事実であると思う。
 いくつかボトルネックがあるかと思うが、まずパナマ運河の渇水問題について話をする。パナマ運河において何が問題かというと、水の量が足りなくてパナマ運河の通行が制限されているという事態がある。基本的にパナマ運河は太平洋と大西洋を結ぶ全長約80キロの人口構造物で、太平洋と大西洋で水位の差があるため、閘門式として船が入った時に扉を開閉し、水位を変化させることによって上下移動させて動かすのであるが、その時に使う水をパナマ運河の中央部にあるガツン湖から引いている。2023年はその水位が干ばつの影響で低くなってしまっており、閘門を通るために使う水の量が確保できなくなり、結果的にパナマ運河庁が通行制限することによって船が通れなくなってしまった。どうして水位が低下してしまったかというと、基本的にはエルニーニョにより降水量が減ってしまったこと、パナマの人口が年々増加し、その半数の水源をガツン湖に依存しているため、人の飲む水と運河の水の争いになっていることもある。パナマ運河の通行については、去年、水が減ってきたのが乾季の夏場であり、通行制限が始まったのが6月ぐらいからで、その後しばらく制限があったが、現時点では緩和していると聞いている。基本的に今雨季になったりして、水がある程度確保されたので通行量が増えているが、これからまた夏にかけてどうなるかという不安が残る。
 もうひとつ海上輸送のボトルネックのトピックスがある。紅海での混乱として、昨年の11月19日にイエメン沖で日本郵船が運航してイスラエル系のオーナーが船主になっている自動車運搬船「Garaxy Leader」がフーシ派に拿捕されてしまった。これをきっかけに紅海において一般商船に対する攻撃が非常に活発になり、同海域が危険地帯になっている。当初はイスラエル系の商船、イスラエルに関係する船だけを襲うと言っていたフーシ派であるが、12月になると、通過する船すべてに対する攻撃がひどくなり、どの船会社、海運会社もこの海域を通れなくなってしまい、年明けになって米軍がフーシ派に対して攻撃を開始したことに対してフーシ派も反撃し、結果的に戦争地帯に近いような状況になってしまった。そのため各海運会社は、アジアから欧州に行く最短のルートである紅海を通ったスエズ運河ルートを通行することができなくなり、アフリカの喜望峰から迂回するルートへの変更を余儀なくされている。
 基本的にコンテナ運賃が何で決まるかというと、需給バランスによって決まっているといって過言ではない。コンテナリゼーション以降、コンテナ船は成長産業であったが、新規参入する船社も多く、常に供給が需要を上回っていた。するとどうしても運賃の下方圧力が強まって、運賃は安く抑えられてしまった。ある程度船社は団結して値上げをしたりしようとはするが、結果的に供給量が多いため、運賃を上げてもすぐ下がってしまうのがコンテナ船業界であった。それが特にリーマンショック以降、5~6%伸びていた貨物需要の成長率が下がってしまった。そうすると、供給過剰が拡大し、コンテナ船社は軒並み赤字に陥った。一方でコンテナ船は、常に船を運航していなければならないので在庫が効かない。そのため船の船腹を埋めなければならないが、高いと貨物が集まらない。そうすると、どこか1社が船腹を埋めるために値下げをする。他社も追随して運賃競争となり市況が低迷する。TEUあたりのコストを削減するために船を大きくする。リーマンショック後はそれが顕著になって、続々と15,000、18,000、20,000TEU型の船が登場して大型化した。それが船腹過剰を招くという悪循環の繰り返しになったのが、リーマンショック以降のコンテナ船業界の状況である。
 ここで何が起こったのかというと、結果的に各社経営が苦しくなり、皆さんまだ記憶に新しいかと思うが、韓進海運が潰れてしまったように、業界内の過等競争によって潰し合いをしてプレイヤーが減っていく状況となった。海運同盟も90年以降は有名無実化していったが、2008年に欧州同盟がなくなって以降、同盟という組織がなくなることによって歯止めが効かなくなった要素もあると思う。カルテルを認められた同盟機能は、一定の抑止効果があったとはあまりは思えないが、運賃競争などの過当競争の歯止めが効かなくなってしまったひとつの象徴的な事例と思う。コンテナ船社の再編も相次ぎ、日本の船社も非常に苦しくなる中で、2016年10月31日に邦船3社がコンテナ船事業の統合を発表し、オーシャンネットワークエクスプレスジャパンの発足になった。結果的にはプレイヤーが減って、コンテナ船1社ではサービスできないためアライアンスを組んでいたが、2015年の4つのグループから、2017年には2M、ザ・アライアンス、オーシャン・アライアンスという3つのグループに再編され、2010年に20社ぐらいあったコンテナ船社が7~8社ぐらいまで集約され、リーマンショック以降苦しんできた過当競争の中でようやく業界の秩序が安定化してきたと思う。
 最後に、国内各港湾の現状と取組について話をする。日本港湾の現状とコンテナ航路であるが、日本の港湾は大小を含めて1,000程ある。その中で、外貿定期コンテナ航路は60港、国際フィーダー航路が6港あり、合わせて66港がコンテナ船で国際貨物を取り扱っている港ということになる。国内で外貿コンテナ航路は昔それほど多くはなかった。1989年の外貿コンテナ航路は29港であったが、1990年以降日中航路を含めて非常に貿易が活発になり、2000年までに59港に増えて、現在は国際フィーダー航路を含めた外貿的コンテナ航路を持っているところは66港まで増加した。毎年当社では、日本コンテナ航路一覧を夏場に発行しており、地方港外貿定期コンテナ航路一覧として夏場に集計したデータを載せている。国の港湾政策については、基本的には外貿コンテナ航路、地方港が増えることによって国も海外トランシップ港に依存するのは非常にいかがなものかということで、国際戦略港湾政策という形で集荷、送荷、競争力強化に向けて京浜・阪神を強化する政策を国土交通省が取っている。
 国内港湾政策でもうひとつ特徴的なものは、港の中であれば、外貿的コンテナ航路もあるが、最近注目されているのはRORO船やフェリーである。2024年問題でトラックドライバーの時間外労働の上限規制が非常に強化され、長距離トラックが走れなくなる。どこに輸送が移るかというと、鉄道貨物では処理できないため、モーダルシフトとして海上輸送に注目が集まる。

 

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