2022.07.26 2022年東三河地域問題セミナー 第2回公開講座 1.開催日時 2022年7月26日(火)14時00分~16時30分 2.開催場所 豊橋商工会議所 4階 406会議室 3.講 師 京都府立大学 生命環境科学研究科 生命環境学部環境デザイン学科 准教授 荒木 裕子氏 4.テーマ 「大規模に備える、地域防災力向上の考え方」 5.参加者 25名 開催案内(ダウンロード) 講演要旨 本日は、大規模災害が危惧される状況であるが、災害時にどういうことが起きているか、どう備えると良いかを皆さんと一緒に考えていく。 私はもともと建築の設計をやっていて防災について関心を持ち、社会人院生として神戸大学大学院へ入学した。入学した年度末に東日本大震災が発生し、その後は防災の分野に携わっている。神戸にある「人と防災未来センター」で研究員を務めている間に熊本地震が起き、調査だけではなく行政の支援に入る経験も持った。災害の現場を見る中で避難者がどのような避難行動をとるか、どうしたら支援が届くのか、どのように支援にたどり着くのかといったことを研究してきた。 2020年の九州豪雨では、コロナ感染リスクのために指定避難所の収容定員が下げられている中、避難者がいっぱいになり他の避難所へ誘導する事例や、コロナ感染リスクより水害のリスクの高さを鑑みて定員以上受け入れる事例もあった。大規模な災害は想定収容人数以上に避難者が出る場合もあり、加えて避難所の建物が損壊して、避難所として使えない、避難所にたどり着けないなどいろいろな要素で、指定避難所以外にたくさん避難が行われる。これまで阪神・淡路大震災、東日本大震災で起きていたことが、南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害が発生した場合も、発生すると予想される。南海トラフ地震の過去地震最大モデルでどれぐらい避難者が出るかという想定が行われているが、愛知県で1日後71万人、1週間後で154万人となる。また、通勤・通学による帰宅困難者も90万人程度発生が予想されている。 大規模災害は想定している以外のことが起こるとともに、想定していることの限界も露呈する。避難者は身を守ることを優先し、安全そうなところに集まるため、なかなか公的支援が避難者までは届かないケースも多くある。企業・住民・避難者自身・行政ができること、できないことを話し合い、その中で良い策を見つけていくことが大切である。話をできる人を見つけて、仲間を作っていくということも重要だと思う。企業がボランティアをサポートする、また、東海地方は近年大きな災害の経験が少ないので被災地での応援を通して学んでくることも大切である。しかし、まずは自分の安全確保が基本となる。家の耐震性確保、家具の固定など備えておくことが必要である。避難行動についても家族や従業員同士で事前に話し合う機会が大切となる。災害時は連絡が取れないことを前提に準備をしておくと良い。建物など自社のもので被害を出さないことが重要となるので、構造物の安全性を高めておく必要がある。また水害などの自然災害に起因する化学事故も起きている。水害による重油流出、爆発事故などもあるため、そちらにも備えて、企業が災害時に周囲の救出救助、消火活動などを含め対応することは、地域にとっては非常に助けになると思う。 ※その後、南海トラフ地震発生時のケーススタディの個人ワークを行い、発表にてそれぞれの考えや行動を共有した。