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その他の事業

2021.04.21 第2回東三河グローアップミーティング

1.開催日時

令和3年4月21日(水)18時00分~20時00分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5階「ザ・グレイス」

3.講師

愛知大学 地域政策学部教授・三遠南信地域連携研究センター長
戸田 敏行 氏

  テーマ

「東三河地域の広域連携を考える」

4.参加人数

44名(オンライン参加 9名含む)

講演要旨

 東三河、三遠南信という自治体の範囲を越えた「広域」をどう繋いでいくか?これは長年の命題であり、東三河懇話会はこれまでこの命題に取り組んできた。本日配布した「50周年史」は東三河の広域づくりの歴史が書いてある。本日の講演が、東三河を広域的にお考えいただく皆さんにとって参考になれば幸いである。
 東三河地域を含む三遠南信地域の人口は約247万人、愛知県と静岡県の端と端がジョイントする部分で、越境連携となる。製造品出荷額は兵庫県、農業産出額は熊本県ほどの規模がある。三遠南信地域の自治体は39市町村ある。自治体の範囲を超える方法は市町村合併と広域連携がある。これまで、我が国は明治、昭和、平成と合併を繰り返してきた。山間地を含んだ浜松市の合併は、「国土縮図型の政令市」と呼ばれている。一つの市町村で完結して住民の生活を守っていくのが「基礎自治体」である。自治体は、明治は「小学校」を支えるため、昭和は「中学校」を支えるため、平成は「人口減少への対応」のために合併を繰り返し、市町村数は71,000から1700まで減少した。
 企業はこの自治体の範囲に束縛されない。これからの人口減少社会において、経済界からは経済活動を支えるためには、広域連携が重要であるという声が良く出ている。広域連携は、人が動いている。豊橋市から豊川市、田原市への通勤者はそれぞれ1万人。これだけの人が動いていることからも、広域連携が必要であると言える。長期的な人口変化を見ると、2010年は人口12,800万人(労働者7,500万人)が、2055年には人口9,200万人(労働者4,400万人)に減少する。逆に、世界の人口は100億人まで増えるという試算があり、資源確保も厳しい。こうした背景から、生きていく地域の単位をしっかりと考えていく必要があり、そこから「自立的圏域」をつくる広域連携となる。そこで広域連携の目的が、持続性と革新性を生み出すことなる。その制度も多くあり、目的を持って活用するべきだろう。広域連携として歴史を遡るとTVA(テネシー川流域開発公社)がある。流域が一緒に手を結んだことで、今まで出来なかったことが出来るようになった。ここで広域連携は草の根の民主主義を進展させるとしている。東三河の広域連携についても、民間からどんどん提案していくことで革新が生まれてくる。
 東三河の実態はどうか。昭和25年から平成27年まで日本の人口の0.6%が変わらず、流域圏の山から都市までを持つ日本の縮図だ。人口自体は50万人から75万人に増えたが、愛知県内の比率は15%から10%を割り込む状態となっている。これが、三遠南信地域で広域連携を進める背景にもなっている。細かくみると、2020年から2040年に向け、総人口は9万人減の65万人、後期高齢人口は2万人増の13万人、前期高齢人口は5千人減の10万人、生産人口は8万人減、市場人口は9万人減と推計される。この変化への対応は、サービス形態の変更や高齢者の労働力参入など、広域な連携で考えることが不可欠だろう。東三河は流域の単位を持っている。これは非常に重要である。東三河と遠州で「三遠南信中山間部の窮状に対する都市住民の意識調査」を行ったところ、中山間地の機能は不可欠が62~63%、優先性は低いが16~17%、疲弊は仕方ないが2%と、同じ割合を示した。天竜川沿いが一つの都市になったことや、流域による繋がりが要因と考えられる。細かく調べると、親族や生活や繋がっている。基礎自治体はあるが、血のつながりは流域の繋がりが強い。農業発展の基盤である豊川用水も天竜川から取水しており、広域連携の力である。
 東三河市町村の流出入所得は、田原市はトヨタ自動車の関係で高い割合であり、蒲郡市は30%減となっている。東三河を一つの単位とすれば、全体でバランスしている。分野別純生産を見ると、東三河は製造業が54%を占めている。製造業を伸ばすための広域連携が必要である。また、全国との比較で強い業種を見ると、輸送用機器(これは、落とせない業種)と農業(伸びしろが大きな業種)があるが、情報IT系(未開の業種)の集積は低くなっている。こうした産業に展開は、広域連携の重要なポイントである。
 リニアによる国土はスーパーメガリージョンと呼ばれる。これによって東海道新幹線も変化する。鉄道や国に頼ることには限界があり、沿線の広域連携で考える必要がある。道路が変われば広域連携も変わる。豊橋・浜松地域も自動車専用道が出来ることにより、人の動きや物流が円滑になる。県境を越えて、産業、物流が一体化し、広域連携の広がりも変わってくる。
 三遠南信地域の広域連携はどう考えられているか?県ごとに広域連携のやり方が違う。遠州は、「政令市合併型」、南信州は「広域連合型」、東三河は「複合型」。「複合型」には、東三河県庁(担当副知事を置いた県による広域連携)、東三河広域連合(東三河が一つの法人を組織)、東三河広域経済連合会がある。県、市町村、経済界の複合である。東三河県庁も、全国唯一の体制を持っており、これらの複合性が活かされることに期待がある。
 広域連携には、将来ビジョンを示す先導者が必要である。東三河は民間が大きな役割を果たしてきた。これまで、東三河懇話会が方向性、計画、行動プランなどを考える場として機能してきた。これからの広域連携を考えると、官と民で一緒に考え、創り上げる必要がある。官民一体となった戦略性を持って総力で実施する。不可避な高齢化、労働力不足に対応した施策を講じ、企業の活動を伸ばしていくことが必要。官と民の補完が必要である。「総合ビジョン」を持ち、一つの事業が出来ると良好な循環になってくる。これが、東三河のこれからのカタチではないかと思う。東三河はその蓄積、必要性、可能性を持っている。

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