2026.02.27 特別講演会「そのシステム、本当に構築する必要ありますか?」
1.開催日時
2026年02月27日(金)15時00分~17時00分
2.開催場所
豊橋商工会議所 406会議室
(豊橋市花田町字石塚42-1)
3.講 師
愛知県 総務局 デジタル戦略監 中谷 純之 氏
4.演 題
『そのシステム、本当に構築する必要ありますか?
~縮減社会において、すぐにできて効果的なこと~』
5.講演内容
東三河地域における人口減少社会に耐えうる持続可能な行政サービス
の構築は急務です。
縮減社会におけるシステムの標準化や共同調達のあり方などについて、
具体的にお話いただきます。また、質疑応答では、システムの広域連
携や標準化を通じ、行政コストの最適化、住民一人ひとりの利便性を
最大化する『共通プラットフォーム戦略』の可能性を探ります。
6.参 加 者
43 名
7.そ の 他
参加無料です。お申し込みは、下段の「開催案内(ダウンロード)」
より、案内に記載の「二次元バーコード」、または下段の「参加申込
書」(FAX・E-mail送信)よりお願いいたします。
【講演要旨】
① はじめに
デジタル化の本来の目的は、住民の利便性向上だけではなく、人口減少や労働力不足が進行する縮減社会において「持続可能な形で行政サービスを提供し続けること」にあります(第32次・33次地方制度調査会の答申より)。 また、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「デジタル化(デジタイゼーション、デジタライゼーション)」は混同されがちですが、DXはデジタル技術を活用して事業や組織を「変革」することです。イノベーションについても、単なる技術革新ではなく、既存の要素を組み合わせる「新結合」(例:櫛+ドライヤ=くるくるドライヤ)であると定義されています。 愛知県内の市議会(豊田市、常滑市、東海市、大府市など)でも、ペーパーレス化やオンライン開催、本会議へのPC持ち込みなど、デジタル化が進み始めています。
② スマートシティ
地域の課題解決に向けて、デジタル技術を活用する実証事業が行われています。例えば常滑市の「スマート牡蠣養殖」は、海洋センサーなどのデータを利用して効率的な養殖を行うことで、漁業の後継者不足と観光客向けの食コンテンツ不足という2つの課題を同時に解決しようとする試みです。 また、大府市の「おぶちゃん連絡帳」は、医療・介護関係者の情報連携ツールとして、民間企業(IIJ)の既存システムをカスタマイズして活用しており、ゼロから自前でシステムを構築する必要がない良い例とされています。県としては、自治体の課題とスタートアップの技術をマッチングする「ガバメントピッチ」を活用した支援も進めています。
③ 地域社会
2030年の未来社会を先行して実用化する「あいちデジタルアイランド」プロジェクトが、中部国際空港島周辺で進行中です。顔認証だけでホテルのチェックインや部屋の入退室、買い物ができる手ぶら決済の実証や、2027年度の実用化を目指す自動運転バスの運行などが行われています。 一方で、高齢者のデジタルデバイド解消のため、同じ高齢者目線でスマホの操作などを教える「高齢者デジタルサポーター」を県が育成し、市町村の教室に派遣する取り組みも行われています。
④ 産業界
愛知県はものづくり県であり、産業におけるDX支援を「一気通貫」で提供しています。企業のフェーズに合わせ、DXへの認知不足にはセミナーを、ノウハウ不足には無料の「デジタル技術活用相談窓口」や専門家が伴走する「モデル実証」を、資金不足には「中小企業デジタル化・DX支援補助金」を用意しています。 また、産学官金が連携する「あいち産業DX推進コンソーシアム」や「あいちロボット産業クラスター推進協議会」をプラットフォームとして運営しています。ロボット導入補助金では、購入だけでなく「お試し」のためのリース代やコンサル費用も対象に含めるなど、実情に沿った支援を行っています。
⑤ 即応・柔軟(即応性と柔軟性)
ChatGPTがわずか5日で100万ユーザーを獲得したように、デジタルサービスの普及・変化のスピードは劇的に速くなっています。そのため、従来のPDCAサイクルではなく、現状を虚心坦懐に観察して即座に行動する「OODA(ウーダ)ループ」の思考が重要です。 愛知県では、DX推進を外部コンサルや技術職に丸投げするのではなく、あえて事務系の若手職員を中心に「愛知県庁デジタル化・DX推進チーム」を全局に配置し、人材を「内製化」して育てています。このチームの提案により、電話の前に在席を確認する「チャットファーストルール」、15分単位の在宅勤務「ちょこっとワーク」、全職員から意見を募る「デジタル改善目安箱」の設置など、身近な業務改革が実行されました。また、住民向けの接点としては、高額な独自のスーパーアプリを開発せず、広く普及しているLINEを多機能化して活用する選択をしています。
⑥ 基盤(ソフト)
市町村が直面するIT人材不足やシステム運用の課題に対し、県が支援を行っています。市町村の若手職員も参加できる実践的な「DX特別研修」を実施しているほか、自治体システム標準化やガバメントクラウドへの移行に向けたコスト最適化の勉強会、国(デジタル庁)への見積精査支援の取りまとめなど、県が主導して市町村を伴走支援しています。
⑦ 基盤(ハード)
山間部(北設楽郡の設楽町、東栄町、豊根村)で運用されてきた「北設情報ネットワーク」(ケーブルテレビやインターネット)は、整備から15年以上が経過し、高額な機器の更新費用と、専門知識を持つ自治体職員の確保が限界に達していました。 これを解決するため、国の補助金を活用しながら、公設公営のインフラを民間企業(中部テレコミュニケーション)へ事業譲渡(民設民営へ移行)するという、非常に難易度が高く失敗が許されないプロジェクトを進めています。
⑧ データ連携基盤
自治体ごとにシステムを乱立させるのを防ぐため、異なるサービス間でデータをやり取りする「データ連携基盤」の共同利用を推進しています。同じ分野であれば既存の基盤を共同利用し、分野が違ってもまずは共同利用の可能性を探ることで、開発・運用コストの削減を目指します。 先行事例として、一宮市のポータルサイト「イチ・デジ」や、蒲郡市の医療・介護情報と個人の健康情報をつなぐ「がまっと!」などがあります。県としても、フレイル予防などを見据えた「あいちデジタルヘルスプロジェクト」を産学官金連携で立ち上げ、データ連携基盤の構築を進めています。
⑨ 国プロ(国のプロジェクト・補助金
国のデジタル田園都市国家構想交付金や、観光庁のインバウンド向け補助金などは補助率が高く、積極的に活用すべきと推奨しています。 事例として、日進市のマイナンバーカードを活用したスマート窓口や自動運転バス予約、知多市のローカル5Gとロボットを活用した公園DXが挙げられています。 観光分野でも、美浜町の偉人「音吉」をテーマにしたツアー、熱田区の堀川クルーズ、新城市の長篠古戦場での武将野営体験、日進市のコーヒーの地域ブランド化(観光資源がないなら作ればいいという発想)、豊川市での高付加価値な寺泊の検討など、多様な補助金活用事例が紹介されています。
⑩ 誤謬(DXやAIに関する誤解)
○人材の誤解:DXは情報システム部門だけの仕事ではなく、すべてのビジネスパーソンが自分ごととして「DXリテラシー」を持つ必要があります。
○言葉の誤解:DXは「変革」でありデジタル化そのものではないため、「DX化」や「DXにより」という表現は本来誤りです。
○セキュリティの誤解:「うちは中小企業だから狙われない」というのは危険です。大企業へのサイバー攻撃の「踏み台」として狙われるため、組織規模に関わらず対策は必須です。
○生成AIの誤解:生成AIに仕事が奪われるのではなく、「生成AIを使いこなせる人」が使いこなせない人の仕事を奪います。ただし、文章作成や議事録作成をすべてAIに任せると、若手職員が自ら考え生み出す「下積み」の経験を奪い、能力を退化させるリスクがあります。そのため愛知県では、生成AIの推奨用途を「アイデアの創出」「翻訳」「プログラミングコードの生成」の3つに絞り、人間の思考訓練を阻害しない使い方を求めています。
以 上
