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産学官民交流事業

2021.03.05 第210回東三河午さん交流会

1.日 時

2021年3月5日(金)11:00~12:00

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム

3.講 師

豊橋市文化財センター 学芸員 中川 永 氏

 ◎テーマ

『崩れゆく吉田城 今、何が必要か?』

5.参加者

33名

講演要旨

吉田城に関する各種イベントは毎年のように開催され、会場は常に満員御礼である。新たな発見も相次いでおり、ひと昔前と比べてメディアの反応も良くなっている。お城ブームもあり、吉田城の御城印は一瞬で完売し、現在もなお新作が発表され続けているが、メルカリなどでは悪質なボッタクリ転売も見られる。
しかし、現実は良いことばかりではない。幸い人的な被害は無かったものの、令和元年度・2年度には立ち続けに石垣が崩落した。急斜面に作られた北多聞の石垣は強く孕み出し、いつ崩落してもおかしくない状況である。また、本来は深さが優に5m以上あったであろう堀が1m程度とほとんど埋没寸前の状況となっている。
今や吉田城は満身創痍であり、適切に保護することが必要である。『文化財保護』とは、「保存」(遺構の保護・植生管理・発掘調査等による状況確認など)と「活用」(観光資源・学習の場・都市公園・公共施設など)が両輪になり、適切な維持管理と利用を行うことで、大切な文化財を後世に繋げていくということである。
令和元年6月に本丸西側の石垣が崩落したが、崩落箇所は樹木の重さが直接集中する箇所にあたり、なおかつ過去に枯死した樹木が朽ちた株となり、石垣内部に大量の水が流入する状況であった。樹木が石垣に与える影響は計り知れないものがある。また、吉田城の土塁は、雨による影響や獣道により土砂が流出するなど、他地域と比べて非常に残りの良い希有な遺構だが、保全が図られていない。
お城は築城以来、常に手を加えることで維持管理されてきた施設である。吉田城は、ここ150年来、ほぼ手つかずのまま放置され、軍隊施設、都市公園、公共施設等として重点的に利用され、保全に全く目が向けられてこなかったのが現状である。「活用」に著しく偏重されてきたことから、今後は「保存」を強く推し進める必要がある。このためには現状を正しく把握し、正しい保存活用に向けた次のような適切なストーリーを作成する必要がある。
* 繁茂する草木の適切な除去・管理による遺構孵化の軽減を図る
* 目視調査・測量調査により、現存する遺構の状況を把握する。
* 部分的な発掘調査により、遺構の地下の状況を把握する。…など
吉田城の適切な保護に向けた令和元年度・2年度の取り組みとして、石垣に生育する草木の除去を行った結果、新たな遺構の発見、遺構の再発見、魅力的な景観の復活などが実現したが、生育する大木に石垣を破壊しながら成長している箇所や、土砂の流出により大木の倒壊の恐れがある箇所が発見されるなど、新たな問題が次々と明らかになった。
吉田城は豊橋市の中心的な文化財であるはずだが、適切な管理は近年まで全くと言って良いほど行われてこなかった。昨今、ようやく状況が把握されつつあるが、遺構の現状を改善するためには数多くのステップと期間が必要である。今急いで遺構の保全を図らないと、取り返しのつかない大崩落が起こる可能性が高い。一度失われた文化財は、どれほどそっくりに修繕してもそれは「令和に作られた復元」と言われ続けることになる。また、「遺構の崩落」は直接「市民の安全」にも影響する。文化財の保護を実現するためには、文化財への関心の底上げを行うとともに、高いハードルを一つ一つ着実に越えなくてはならない。