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産学官民交流事業

2023.03.14 第461回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2023年3月14日(火) 18時00分~20時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

豊橋創造大学 経営学部経営学科 教授 見目 喜重 氏

  テーマ

『太陽光発電と循環型社会 ~東三河の太陽光発電の優位性と太陽光パネルのリサイクル~』

  講師②

有限会社環境テクシス 代表取締役社長 高橋 慶 氏

  テーマ

『食糧高・資源高の時代における食品リサイクルの取り組み』

4.参加者

69名(オンライン参加者 13名含む)

講演要旨①

 持続可能な社会の構築には、再生可能エネルギーの更なる導入拡大が必要であり、太陽光発電に対する期待は大きい。2030年の電源構成に占める太陽光発電の割合は、目標値として約14~16%となっている。東三河地域は全国的に見ても太陽エネルギーに恵まれた地域であり、太陽光発電の導入に適した地域である。豊橋市は「RE100」を目指して様々な取り組みを実施しているが、実現には更なる太陽光発電の導入が必要である。一方、耐用年数超過後の太陽光パネルの大量廃棄が大きな問題となっているが、その解決には太陽光パネルのリサイクルの取り組みが不可欠であり、近年、東三河地域を含めて各地で様々な取り組みが行われている。
 日本の一次エネルギー供給量の推移を見ると、2008年のリーマンショック時をピークに減少傾向を示している。2020年の再生可能エネルギー等(水力除く)は9.7%、エネルギー自給率は11.2%となっており、電源構成比の7.9%を占める太陽光発電が大きく寄与している。日本の太陽光発電の導入量の推移を見ると、1kW当たりのシステム価格は2020年には29万円まで低下している。全導入量は2012年の「固定価格買取制度」の開始後に増加し、2020年には6,476万kWまで増えている。これだけ導入されたということは、20~30年後にはこれらが廃棄されるということになる。2020年における日本の太陽光発電の累積導入量は世界第3位である一方、世界の太陽電池モジュールの生産量は中国が70%を占めており、日本の生産量はわずか0.3%である。2006年には世界の生産量の上位5社のうち3社が日本のメーカーであったが、現在はほとんど生産されていない状況になっている。今後のエネルギー問題を考える上で、一つの大きな問題であると思っている。
 東三河地域の太陽光発電のポテンシャルはどれくらいあるのか。日本気象協会がNEDOの委託で整備した気象データベース「METPV-20」により、豊橋の年間日射量を計算する。全国の日射量マップ(日平均日射量)、年間日射量(最適角度)の分布をみると、東三河地域は全国的に見て日射量が多い地域ということが言える。METPVによる「水平面全天」における豊橋の各月の日射量を見ると、気象状況による変動は冬季よりも夏季に大きく、8月の日射量は12月の約2.2倍になっている。また「傾斜面(南・30度)」にすると、8月の日射量は12月の約1.3倍、年間合計日射量は1.16倍と日射量の月変化を抑制する結果となり、傾斜角の検討が重要であることが分かる。豊橋の年間日射量(水平面全天)と年間太陽光発電量は実際どのくらいあるのか。METPVによる値と豊橋市(とよはしE-じゃん発電所)の2017年~2021年の実績値を見ると、年間太陽光発電量は約1,500kWh/kWpで、一般的に言われている値の1.5倍となっており、東三河地域は全国的に太陽エネルギーのポテンシャルが高いということが実証されている。
 「RE100」の実現を目指して、市内小中学校への太陽光発電の活用について考える。2015年3月末時点で豊橋市内全小中学校には、計740kWpの太陽光発電が設置されている。今後、合計で5,420kWpの設置が可能であり、これにより全小中学校の年間消費電力の1.08~1.35倍の発電が可能となり、「RE100」実現への貢献が期待できる。
しかし、設置を進めていくと太陽光パネルの大量廃棄問題につながることになる。太陽光パネルの耐用年数は20~30年であり、使用不能となったものはほとんどが産業廃棄物として埋め立て処理されている。太陽光パネルの廃棄量は、2015年は2,400t(平成24年度最終処分量の0.02%)であったが、FIT制度により太陽光発電の導入が急拡大し、使用量も急増したことから、2035年には60,000t(同0.43%)、2039年には800,000t(同5.70%)にのぼると予測されており、資源の有効活用、また循環型社会を構築していくという観点から、リサイクルをして産業廃棄物を削減していくことが非常に大きな課題である。
 太陽光パネルのリサイクルは、ジャンクションボックスとアルミフレームを取り外し、その後ガラスとそれ以外に分離するというのが一般的な流れになっている。太陽光パネルは耐久性向上のため、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、封止樹脂)を使用しており、ガラスとの分離が難しい、EVAの溶解技術やEVAとガラスの分離技術などの開発が必要、鉛などの有害物質を一部含む場合がある、などの課題がある。環境省は「太陽光発電設備のリサイクル促進に向けたガイドライン」で、有害物質対応、埋立処分方法の明確化、被災した太陽光発電設備を取扱う際の注意点の提示に加え、事例として使用済パネルのリサイクル技術を紹介している。また、NEDOは「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト(H26~H30年度)」で、太陽光発電設備のリサイクル社会の構築に向け、廃棄物の大量発生の回避を低コストに実現する技術として、使用済み太陽光発電システムのうち、分解処理が困難である太陽電池モジュールの低コスト分解処理技術を確立するとともに、撤去・回収・分別・リユース関連技術などについて課題と対策を検討することを目的に、研究開発や調査を実施した。この中の「低コスト分解処理技術実証」には、「ホットナイフ分離法によるガラスと金属の完全リサイクル技術開発」(株式会社浜田、株式会社エヌ・ピー・シー)、「PVシステム低コスト汎用リサイクル処理手法に関する研究開発」(株式会社新菱)がある。
 最近では「熱分解処理による太陽光パネルのリサイクル」(株式会社新見ソーラーカンパニー)などの取り組みもある。また、廃棄パネル回収の動きとして、全国的にも数少ない太陽光パネルの高度な処理技術を持つリサイクル業者が存在している福岡県は、「廃棄太陽光パネルスマート回収システム」を構築した。東三河地域企業の取り組みとしては、加山興業株式会社の「ブラスト工法による太陽光パネルリサイクル」、愛知海運株式会社(株式会社シーエナジーとの共同)の「太陽光パネルリサイクル事業(2023年4月~)」、愛知県「あいちサーキュラーエコノミー推進プラン」における太陽光パネル循環利用モデルプロジェクトチームの立ち上げ、などがある。
 持続可能な社会の構築に向けて、今後、太陽光発電のさらなる導入拡大が不可欠である。東三河は太陽エネルギーのポテンシャルが全国的にも高い地域であり、その優位性を最大限に生かして、住宅や施設への導入拡大、ソーラーカーポートやソーラーシェアリングの積極的な活用を推進し、エネルギー自給率と食料自給率を上げていくことが重要である。一方で、大量導入により太陽光パネルの廃棄問題は深刻になり、その対応としてリサイクル事業の促進が不可欠となる。発電とリサイクルの両面で全国をリードすることで、東三河地域の活性化が実現できれば非常に良いことだと思う。

講演要旨②

 愛知県豊川市に本社を置き、経営理念として「私たちは創意工夫をもって資源循環により新たな価値を生み出し持続可能な社会実現に貢献します。」を掲げている。10年程前から「サステナブル」というのは大きな社会における重要なキーワードになると思い、経営理念の中に入れた。当社は基本的には食品リサイクル(飼料化)および関連事業を行っているが、大事にしているのは、新たな価値を生み出し、他の会社がやらないリサイクルを行い、今まで捨てられていたものを有効活用する、そういったことに取り組んでいる会社である。社員数は20名で、売上は2億5千万円(連結2022年実績)の零細企業である。私は、1973年生まれ、名古屋大学農学部卒の49歳で、名古屋の水処理メーカーの研究開発部門を経て、2005年豊川市に有限会社環境テクシスを創業した。東三河には一人も知り合いがいなかった。名古屋で創業しようと考えたが、よくわからないベンチャー企業に工場を貸してくれるところがなく、たまたま空いていたのが豊川の貸工場であった。
 2005年に会社を作り、最初は廃棄物のリサイクルでも肥料をつくる会社を始めたが、餌にするリサイクルはマーケットとしても非常に面白く、また事業としてやりがいがあるのではないかと事業の転換を図った。東三河地域では当時から創業支援が行われており、脱サラで事業を始めるのはハッキリ言って無謀であまりお勧めできないが、なんとかこの地域の皆さまのご支援のおかげで事業が行えている。また、「ビジネスプランコンテスト」など地域でベンチャー企業を盛り上げていこうという当時からそういう機運があったからこそ、縁もゆかりもない東三河で、本当に知り合いがいない状態から事業をなんとか拡大することができたのかなと思っている。
 なぜ、食品リサイクルが今求められているのか。今、食べ物の値段が非常に上がっている。これはウクライナ情勢や為替の影響も大きいが、食糧の需給が逼迫してきているということがある。人口が増えて畜産物を食べると穀物の消費量が増える。なぜ食糧危機が起きていないかというと、化学肥料や栽培技術の進歩、品種改良の進歩等で、単位面積あたりの肥料が非常に増えている。これだけ収量を増やすための肥料を大量に消費しているので、値段が上がっていると時々ニュースを賑わしている。
 日本の置かれている状況として、食糧を輸入している国の変化を見ると、1998年では世界で一番食べ物を輸入していたのが日本である。それが2021年には中国の輸入量が増えてきて、日本の輸入量は2番目になっている。中国政府は、食糧の安定的確保に努力している。食糧が足りなくなると共産党政権が倒れてしまうのではないかと恐れ、農業に対する補助などは非常に手厚い。その上で海外の食糧をいかに安定的に調達するかというところに対してもすごく力を入れている。国内でも食糧生産をかなりやっているにも関わらず、人口増などに対して追いついていなことがおそらく要因ではないかと思う。日本はこれまでのように食糧の輸入が出来なくなる可能性もある。
 それから、食品リサイクルにおけるフードロスというのが非常に問題になっている。当社は食品工場の廃棄物だけをほとんど扱っており、例外的にこのホテルアークリッシュ豊橋のリサイクルの一部も取り組んでいるが、実は廃棄ロスで一番量が多いのは食品製造業である。もちろん外食とか小売りとか家庭の廃棄物というのは大きな量を占めているが、圧倒的に多いのは食品製造業である。あと、食品製造業の品質が少しずつ上がってきているが、これはなぜかというと、今家庭で調理をしなくなっている中食、外食、特に中食のマーケットが非常に伸びてきているからである。食品製造業から出てくる肥料はまだまだ量があるのでこれを餌にしていこう、また燃やしているものもあるのでこれをうまく活用していこうという取り組みを行っている。
 日本の農業マーケットの構造は、米の割合が一番高かったが、米価の低迷や消費量の低下により、実は日本の食糧の農業生産産出額で一番多いのは畜産業であったりする。東三河地域でも畜産の比率は非常に高く、非常に大きなボリュームを占めていることを覚えておいていただきたい。
 このような背景をもとに、当社は飼料肥料製造(産業廃棄物処理)、飼料販売(商社機能)、養豚、コンサルという、4つの事業ドメインを行っている。取り扱い商品としては、ビール・ウイスキー(麦芽粕)、もやし(廃棄もやし)、菓子製造業(グミ・飴玉)、日本酒酒蔵(酒粕)、バームクーヘン(切れ端)、カットフルーツ(フルーツ皮)、レーズン輸入商社(規格外品)のリサイクルがある。フードロスの原因の多くは、消費者の身勝手な要求ではないかと、この仕事をしていていつも思うことである。
 独自の取り組みをしているのが「オンサイト処理」である。食品工場の中に飼料を加工することで餌になるシステムを導入したものである。このようなシステム自体のご提案をコンサルティングとして行っている。このシステムを提案するということで「東三河ビジネスプランコンテスト」で最優秀賞をいただき、実際その後のビジネスで広く展開しており、埼玉県のクラフトビール工場など15カ所程度で実績を挙げている。
 もう一つ、自社工場でいろんな餌を作り、100%リサイクルの餌で豚を肥育し、「雪乃醸」というブランドで生産から販売まで行っている。養豚事業を行う目的は、新しい飼料の試験、美味しい豚肉生産への挑戦、養豚に関するノウハウの蓄積、消費者に対するエコフィード利用のアピール、原料の需給調整、事業収益である。自社養豚の主な飼料原料は、パン、ラーメン、キャンディー、ビール酵母、菓子生地などを混合し、60℃で30分加熱したものである。豚肉の味はコントロールできるので、トウモロコシや大豆粕を全く使わない美味しい豚肉を生産している。
 当社が大事にしていることは、他社のやらない仕事をする、お客様の経営に寄与する、新しいことにチャレンジする、情報発信であり、当社・食品メーカー・畜産農家が「三方良し」の関係を構築することである。
 今後の方向性は、食糧を含む資源の高騰や日本の相対的な経済力低下を背景に、農家の取り巻く環境の厳しさや食品製造業の疲弊という課題に対し、資源循環による循環型農業のリーディングカンパニーを目指している。大きなビジョンは、「日本、世界の食料生産システムを変える礎をきずくこと」である。持続可能でなければ事業が存続できない時代において、当社は少しでも世間の皆さまのお役に立てるようにやっていきたい。