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産学官民交流事業

2021.10.19 第444回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2021年10月19日(火) 18時00分~19時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 准教授 杉木 直 氏

  ◎テーマ

『静岡県湖西市における企業シャトルBaaS事業実証実験について』

  講師②

豊橋信用金庫 理事長 山口 進 氏

  ◎テーマ

『創立100周年を迎えた豊橋信用金庫の取組み』

4.参加者

86名(オンライン参加者 10名含む)

講演要旨①

昨年から取り組んでいる「静岡県湖西市における企業シャトルBaaS実証実験」についてお話しさせていただく。私は13年間、民間建設コンサルタントで道路事業評価、都市圏PT調査などに従事し、研究を進める上で“問題意識”を持つ大切さを経験してきた。専門は、土木計画学、交通工学で、都市構造や都市交通を対象としたシミュレーション、新たなモビリティが社会に与える影響、災害時の避難・情報伝達などに関する研究に従事している。
地方都市における交通課題には、①少子・超高齢化社会の到来(自家用車の運転が出来なくなる高齢者等の増加)、②高齢者事故割合の増加(免許返納が出来ない高齢者の増加)、③公共交通の地位低下(公共交通機関の減便や廃止)、④バス運転手の不足(第二種免許保有者の高年齢化)がある。これらの交通課題の解決には、①総力戦による公共交通の確保(地域全体として公共交通網を維持する取り組みや行政・民間企業・市民を含めたコラボレーションによる対策)、②新たな情報通信技術の活用による次世代交通システム(MaaS:Mobility as a Service)が必要になる。
湖西市は、静岡県の最西端、浜名湖の西側に位置し、人口約58,800人、自動車関連産業が盛んな地域である。湖西市における公共交通の課題は、高い自動車依存率とコミュニティバス利用者満足度の低下と乗車率低調の恒常化が挙げられる。検討の背景は、市内企業が従業員の通勤や拠点間の業務移動のためにシャトルバスを多数運行しており、市が運行するコミュニティバスと連携することで、両者の効率性及び利便性の向上、さらには市内経済の活性化に資することができないかと考えたことである。
BaaS実証実験の目的は、①市町村有償旅客運送制度により企業シャトルバスで地域住民を運送する先進的な取組み、②利用モニターによる予約配車システムを活用したデマンド方式による運行、③運行時における事故等のリスクに対する備えとして、新たな保険商品の開発・提供、④移動サービスとしての地域への受容性や公共交通分担率の変化などに関する調査・分析の実施である。実施団体は、代表団体として「湖西市・地域公共交通会議」、予約配車システムの提供として「MONET Technologies(株)、保険商品の開発・提供として「あいおいニッセイ同和損害保険(株)」、各種調査による効果や課題の検証として「豊橋技術科学大学 都市交通システム研究室」、並びに「湖西市企業シャトルBaaS研究科参加企業10社」が協力した。実証実験期間は、2020年11月30日~12月25日、(株)デンソー湖西製作所、浜名湖電装(株)の2社に協力いただいた。利用車両は「トヨタコースター(20人乗り)」、利用状況はモニター登録者132人で、利用者延べ人数は249人であった。
BaaS実証実験の検証命題は、①企業シャトルBaaSサービスモデルの検証、②高齢者の移動に与える影響、③地域経済へ波及効果の可能性の3つであり、①地域住民へのアンケート調査、②モニター利用者アンケート調査、③企業シャトルバス利用者アンケート調査、④企業シャトルバス運行企業ヒアリング調査を行った。
実証実験からの考察として、実用化に向けた運行体制・事業採算性については、定時定路線をベースにデマンド的な需要に応える定時迂回路が適切であること、同一方向の企業が共同で運行し、既存のコミュニティバスと一元的に運行すること、コミュニティバスと企業シャトルバスの相互混乗には相互の機能補完としてメリットがある形を構築する必要があること、地域経済波及効果をより高めるための工夫としてSNSによる情報発信などを行い、効果を広く発言できる仕掛けが必要であることが考えられる。また、BaaSの他地域への展開の可能性については、企業従業員・モニター共に混乗に対して受容性が高く好意的であり、可能性は十分に考えられる。また、企業シャトルバスの混乗に向け、同一方向・区間の企業シャトルバスを複数企業で共同運行を図ることでより効率的な運行となることから検討を進めることが必要である。
課題と今後の方向性としては、高いユーザビリティに配慮した予約配車システムの構築、湖西版MaaSの展開による利用の平準化や最適化、一般に広く利用されるSNSの活用や既存店舗との連携による経済波及効果の創出が必要である。令和3年度の実証実験の方向性は、湖西市公式LINEとの連携による予約システム、商業施設との連携によるクーポン配信、ドラッグストアと連携したヘルスサービスの提供を考えている。
交通事業者や自治体による移動手段の提供から、地域によるサービスとしての移動の提供(MaaS)への代替により、安全で安心な地域社会の実現や新たなビジネス機会の創出が生まれる。

講演要旨②

創立100周年を迎える豊橋信用金庫の取組みとして、「歴史」と「取組み」の2点についてお話しさせていただく。大正10年11月に豊橋市上伝馬町で「有限責任豊橋信用組合」として創業。代表者は第2代豊橋市長を務めた高橋小十郎氏である。愛知県には15の信用金庫のうち西尾信用金庫(大正2年創業)、全国では254の信用金庫のうち静岡県の掛川信用信金(明治12年に創業)が最も古い。昭和27年の豊橋信用金庫の預金は、7,632万8千円であった。
昭和20年代から30年代の高度成長過程下での業容拡大により、昭和28年に駅前支店、昭和30年に二川支店、昭和34年に大手町に新本店を開設した。その後、社会インフラの進展により店舗網の拡充を行い、渥美信用組合との合併による渥美地区への進出を果たした。昭和に10支店、平成に10支店を新設し、現在は実店舗33、インターネット支店を含め計34店舗で業務を行っている。当金庫は、豊橋市、豊川市、田原市、新城市、湖西市の5市にしか店舗がなく、狭域高密度を目指して営業を行っている。
平成9年1月、創立75周年を機に豊橋市小畷町に新本店を開設した。また、創立90周年には、地域の子どもたちを大切に育てることを目的に、のんほいパークに対して園内移動電気バスやキリンモニュメント・壁画などの寄贈を行った。その他、金融教育出前授業(2008年以来、5,700名の生徒が受講)、530運動やエコキャップ推進運動などの環境への取り組み、団体活動への参加など、地域貢献活動を積極的に展開している。
預金は、昭和55年11月の1,000億円から上昇を続け、令和2年には9,000億円となり、貸出金は令和2年に4250億円に達した。豊橋市内のシェアは、預金24%、貸出金22%でトップシェアを誇っている。
信用金庫に求められる役割は、協同組織金融機関として“相互扶助の協働組織(非営利法人)”であり、地域に密着した金融機関として地域社会の発展に貢献することが使命となっている。当金庫の基本方針は、「地域社会の中小企業ならびに一般大衆に信用され 頼られ 愛される金融機関となる」であり、「経営理念」(「経営方針」から変更)は、①堅実で健全な経営に徹し、お客様の信頼を獲得します、②金融仲介機能を果たしてお客様のニーズに応え、地域経済の発展に寄与します、③法令やルールを守り、誠実で公正な業務を遂行します、④コンサルティング機能と情報仲介機能を発揮し、地域の活性化に貢献します、⑤創造力豊かな人材育成に努め、明るく、活力のある職場を目指します、である。また、2020年4月1日には、「豊橋信用金庫SDGs宣言」を表明している。
コンサル機能の発揮として、地域密着型金融の各種取組みを行っている。資金繰り支援として、「事業性評価融資」「SDGs応援ローン」「東三河3信金地域応援ローン」「劣後ローン等を活用した資本性資金の供給」「助成金・補助金等申請支援」がある。また、地域の成長・発展のための主な取組みとして、起業・新事業創出、販路拡大、デジタル化、事業承継・M&Aに関して57先の外部機関と緊密な関係を構築し、当金庫の強みであるお客様との緊密なリレーションシップのもと、コンサルティング機能を発揮している。この取組みは、今後更に強めていきたいと考えている。
PFI事業の取組実績については、2004年の「田原市新リサイクルセンター整備等事業」から2021年の「豊橋市新学校給食共同調理場(仮称)整備等事業」まで、豊橋市および田原市が実施している10事業のPFIにレンダーとして参加しており、全国の信金の中でもトップクラスの実績である。また、平成6年には豊橋技術科学大学と職員の派遣や講師派遣などに関する包括連携協定を締結しており、創立100周年を契機に、本年、愛知大学、豊橋創造大学・豊橋創造大学短期大学部とも同協定を締結した。
地域になくてはならない金融機関、地域とともに歩んでいく金融機関として、創立100周年記念事業を行っている。「地域の笑顔」と「職員の笑顔」をキーワードとしたプロモーション映像の制作、半年15回に及ぶ理事長と若手職員との懇談会、創立100周年ロゴマークとキャッチフレーズ(「おかげさまで100周年 あなたとつくる笑顔の未来」、イメージキャラクターの手筒花火を持った信ちゃん、とよちゃん)の制作、新型コロナウイルス対策や地域社会の繁栄に役立てていただくための5市(豊橋市、豊川市、田原市、新城市、湖西市)への寄付・寄贈を行った。また、創立100周年記念金庫歌「笑顔の未来」の制作つくった。「You Tube」での視聴、「第3回NIKKEI全国社歌コンテスト」への投票をお願いしたい。
100周年は新たなスタートライン。これからも、引き続き、ご支援、お力添えをお願いしたい。職員一同、頑張ってまいります。