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産学官民交流事業

2022.01.18 第447回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2022年1月18日(火) 18時00分~19時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

豊橋創造大学 保健医療学部看護学科 学科長・教授 蒔田 寛子 氏

  テーマ

『訪問看護師の在宅療養支援~生活と医療の統合~』

  講師②

愛知県東三河総局 総局長 矢野 浩二 氏

  テーマ

『東三河振興ビジョン2030について』

4.参加者

78名(内、オンライン参加者 12名)

講演要旨①

訪問看護が制度化されたのは約30年前。全国の訪問看護ステーションは1万か所以上あり、東三河地域には24か所(愛知県内363か所)ある。
1992年の第2次医療法改正により、医療提供の場として「医療を受ける者の居宅」が明記され、在宅において国民が医療を受ける権利が法律で保障された。また、看護師は「医療の担い手」として定義され、医療において重要な役割を担い、社会的に認められる職種となった。1948年に制定された保健師助産師看護師法における看護師の業務は、「療養上の世話」(医師の指示なし)と「診療の補助」(医師の指示あり)と定義されたが、2014年の「特定行為研修制度」(38行為、21区分)により、医師の事前指示と手順書があれば、研修を受けた看護師が患者に対してタイムリーな診療が行えるようになった。
現在、社会保障費の問題に加え、コミュニティの中で孤立することなく住み慣れた環境で療養生活を継続したいという考え方の変化から、病院医療中心から在宅医療へと地域ケアシステムの構築が図られている。訪問看護師の仕事は、安全に医療的支援を提供すること、主体的に行う療養上の世話である。訪問看護師は、療養者の健康問題の安定を生活の基盤におき、健康問題の解決・改善・維持・悪化および合併症の予防を行い、日々の医療を生活になじませつつ、療養生活の質の向上を目指し、「療養生活支援の専門家」として業務を実践している。
生活には時間軸がある。病院内看護の時間軸は治療過程が中心となるが、訪問看護は療養者の自宅での安定した療養生活継続が目標であり、「現在」を療養生活の通過点として捉え、「過去」に起こったことをふまえ、「今後」おこりえることを予測するという時間軸で看護を行っている。
療養者は地域社会システムの一部であり、地域のコミュニティの中で生活している前提がある。コミュニティの中での孤立は生活継続が決定的に困難となってしまうため、近隣住民、地域の民生委員等との関係はとても大切であり、独居高齢者も自ら社会関係を維持できるよう心掛けている。訪問看護師は、地域社会との関係性を考慮しながら療養者を支援している。
療養者が地域で孤立しないよう、効果的な多職種連携とソーシャルキャピタルを活用した「地域包括ケアシステム」の構築が必要である。訪問看護はコミュニティの中での看護が基本であり、地域包括ケアシステム推進において十分な役割を果たしていけると思う。現在、「訪問看護の見える化」に取り組んでいる。訪問看護師は何をするのか、どのようなサービスを提供するのかを広く社会に示して行きたい。

講演要旨②

「東三河振興ビジョン2030」の策定経緯、ビジョンのめざすもの、その内容の概略についてご説明させていただく。東三河地域は、愛知県東部に位置し、5市3町村からなり、南北に豊川、山、平野部、半島があり、非常に環境の整った地域である。東三河地域の現況として、人口は約75万人(全県の約1割)、面積は1,723㎢(全県の約3割)、製造品出荷額等は4.6兆円(全県の約1割)、農業算出額は1622億円(全県の約5割)となっており、工業・農業のバランスがとれたポテンシャルの高い地域と言える。
東三河が一体となった地域づくりに向けた動きとしては、2012年4月の「東三河県庁」の設置と並行して、広域的な取り組みを進める団体が多く設立・設置されたが、“東三河はひとつ”を合言葉に経済界を中心に昭和43年に設立された「東三河開発懇話会」(現 東三河懇話会)や平成10年に設立された「東三河広域観光協議会」など、これまでに長い蓄積があったことは言うまでもない。
2011年2月に就任した大村知事は、「東三河地域の振興」を愛知県全体のさらなる飛躍に向けた大きな柱とし、地域資源を活かした振興施策推進の仕組みとして「東三河県庁」を設置した。東三河担当副知事の下、東三河地域の地方機関が一体となって東三河振興に取り組むネットワーク型の推進組織であり、東三河総局では分野横断的な政策立案と総合調整などに取り組んでいる。
経済界では、2012年4月に「東三河広域経済連合会」が設立された。商工会議所と商工会が混在する連合組織は全国においても稀で、県内では初めてである。また、東三河地域の振興に向けたビジョンの策定、推進に関することや、東三河地域の振興に向けた各種連携方策について協議を行う組織として「東三河ビジョン協議会」が2012年4月に設立された。
2014年10月から開催されている「東三河人口問題連絡会議」では、愛知県内において先行して減少局面に入った東三河地域の人口問題や地方創生に係る取組状況について、市町村や学識経験者とともに情報共有と意見交換を行っている。また、産学官連携として「社会人キャリアアップ連携協議会」が2014年10月に設置され、地域経済の担い手となる人材育成のための社会人のキャリアアップを地域が一体となって推進する体制が構築された。さらに、東三河8市町村で構成する「東三河広域連合」が2015年1月に設立され、介護保険事業、広域連携調査事業、滞納整理事務等が広域的に実施されている。
東三河振興ビジョン「将来ビジョン」とは、東三河の目指す地域の姿(10年後の将来像)や、その実現に向けて2023年までに重点的に取り組むべき施策の方向性を明らかにする「東三河の地域づくりの羅針盤」である。将来ビジョンに位置付けた重点的な施策から、毎年度1~2テーマを選び「東三河振興ビジョン『主要プロジェクト推進プラン』」を策定し、2012年から12のプランを実施している。この取組の推進により、東三河の地域づくりの各主体間において、情報が共有され、東三河全体で取り組む体制の整備が進んだ。
「東三河振興ビジョン2030」は、急速なICT技術の進展や外国人の増加、新型コロナウイルス感染症による生活や地域経済への影響により、様々な環境変化に迅速に対応する必要が生じたため、新たな将来ビジョンを2年前倒しで策定することとした。策定主旨は、『団塊ジュニア世代が全て65歳以上となる中、未来技術の進展、リニア中央新幹線の開業、広域幹線道路網の充実等により、東三河地域を取り巻く環境が大きく変化する「2040年頃」と展望し、また国連が掲げたSDGsの理念を踏まえ、めざす地域の姿を描き、地域が一体となって取り組む「2030年度」までの重点的な施策の方向性を示す。』である。
2040年頃の社会経済の展望として、①人口減少の一層の進行、人生100年時代の到来、外国人住民の増加、②新たな大規模感染症リスク等による社会経済の変化、③急速に発展する未来技術(Society5.0)、④リニア中央新幹線開業、三遠南信自動車道全線開通等による人の流れの変化、⑤世界経済のアジアシフト、多極化、⑥災害の増大、脱炭素化の進展、SDGs理念の浸透、が挙げられる。めざす地域の姿は、地域づくりの各主体が東三河の特徴である多様な自然や豊かな恵み、歴史・伝統文化を活かしながら、連携と協働を一段と進め、新しい魅力や価値を醸成しつつ、暮らし・経済・環境が調和する地域社会を形成することで未来を拓き、豊かさを保ちつつ輝く東三河として持続する地域をめざすこととし、キャッチフレーズを『連携と協働で未来を創る 輝き続ける東三河』とした。
重点的な施策の方向性として、①豊かな暮らしを実現する地域づくり、②誰もが活躍できる地域づくり、③環境の保全・再生、④地域の魅力の創造と活力の創出、⑤地域産業の革新展開、⑥地域を支える社会基盤の整備、⑦多様な連携による地域力の向上を掲げ、それぞれに主な取組項目を設定している。
ビジョンの推進方法は、「連携と協働による推進」とし、重点的な施策の方向性に沿った様々な取組を、東三河ビジョン協議会構成団体により推進するとともに、新たな広域課題への対応を強化する重点プロジェクト事業は、プロジェクトチームの設置により取り組んでいる。2021年度重点プロジェクトは「大都市(東京圏・名古屋圏)の企業・個人を対象とした東三河関係人口、移住・定住の創出」をテーマとし、関係人口の創出、移住・定住を促進し、地域課題の解決、地元企業の人材不足の補填、人口減少の抑制をめざし、2022年度から2024年度までの3年間を計画期間として取り組んでいる。