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産学官民交流事業

2022.03.15 第449回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2022年3月15日(火) 18時00分~19時30分(※時間短縮)

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

愛知大学 法学部 准教授 木村 義和 氏

  テーマ

『今、なぜ、フランチャイズ取引適正化法が必要なのか』

  講師②

国土交通省 中部地方整備局 設楽ダム工事事務所 事務所長 真鍋 将一 氏

  テーマ

『設楽ダム建設におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取組』

4.参加者

73名(内、オンライン参加者 18名)

講演要旨①

 フランチャイズシステムとは、フランチャイザー(本部)が、フランチャイジー(加盟店)と契約を結び、フランチャイジーに対して、自己の商標、サービス・マーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識および経営のノウ・ハウを用いて、同一のイメージのもとに事業を行う権利を与えるとともに、経営に関する指導を行い、その見返りとしてフランチャイジーから契約金、ロイヤリティ等一定の対価を徴するフランチャイズの関係を組織的・体系的に用いて行う事業の方法である。店舗の経営に成功しやすいというメリットがある一方、ロイヤリティの支払いや経営に対する裁量が制限されるなどのデメリットがある。
 日本フランチャイズチェーン協会による2020年度の統計では、日本国内のフランチャイズチェーン数は1,308チェーン、国内の店舗総数は254,017店舗、売上高は254,204億円の巨大産業になっている。このような現況下、日本弁護士連合会は2021年10月に「フランチャイズ取引適正化法の制定を求める意見書」を出した。内容は、①本部の加盟店に対する情報提供義務の明文化、②契約書ひな型等の一般公開、③契約に関するクーリングオフ、④フランチャイズ契約における不当条項の無効化、⑤団体交渉の有効化、⑥経済産業省における行政措置、⑦公正取引委員会における行政措置、⑧紛争解決制度の創設、である。
 フランチャイズには、本部による恣意的な契約の更新拒絶、中途解約の困難さ、違約金で縛る契約、年中無休24時間営業などの“闇”がある。意見書における「本部による更新拒絶」に関する立法提案の理由は、反抗的な加盟店に対する報復行為として行われる場合が多いことからである。フランチャイズ法(特別法)がない現状では、民法が適用される。民法上のルールでは、「契約期間満了で終了」「更新には当事者の合意が必要」となっており、本部が契約更新をしないと言えば、更新できないことになる。2020年公取委によるコンビニ実態調査報告書では、「仕入数量の強制」や「見切り販売の制限」というコンビニ問題が生じた理由は、「本部による恣意的な契約の更新拒絶が可能であることが原因である」と明らかにしている。加盟店は本部に依存しており、本部に契約の更新を拒絶されると生活できなくなるため、本部に逆らうことができない。そうなると加盟店は本部の不当な圧力に従ってしまい、フランチャイズ問題が発生するという流れになる。これを断ち切るためには、本部による契約の更新拒絶に対する正当事由が必要となってくる。
 2016年度消費者庁のデータによると、日本における食品廃棄量は約2,759万トン。売れ残りによる食品ロスは約643万トンであり、そのうち約5%がコンビニとなっている。コンビニ売上高の1%の食品ロスは1日約2.8億円、500円のお弁当約56万食分が捨てられていることになる。また、契約有効期間内の中途解約権は加盟店に一切与えられておらず、やむを得ない事由があっても中途解約時に加盟店に対して多額の違約金を課している場合がある。民法では、「契約内容は当事者が自由に決めることができる」とされており、コンビニで中途解約をした場合、違約金として3ヶ月分相当額のロイヤリティが課されているのが現状である。2020年における公取委の「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査」では、1週間あたりの平均店頭業務日数は6.3日、2年間の平均休暇日数は21.3日(月に約1.8日)、1週間あたりの平均店頭業務時間は44.4時間、年間の平均深夜勤務日数は84.7日(月に約7.1日)となっている。また、ファミリーマート加盟店ユニオン作成の資料によると、15名中8名の加盟店オーナーが過労死ラインを超える労働をしているという結果が出ている。
 フランチャイズビジネスには、フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店が信頼関係で結ばれ、共に十分な利益を得て繁栄し、社会に貢献していくという理想があり、共存共栄が求められる。

講演要旨②

 国土交通省は、令和4年2月21日に「中部圏長期ビジョン」を公表し、QOLを高めることを1つの目標に位置づけ、重点連携プロジェクトには、スタートアップやカーボンニュートラル等の新たな投資や成長につながる視点を取り入れた。これからは、インフラ機能向上などの「モノづくり」に加え、地域と生活の満足度につながる「コトづくり」を重視するとともに、人(QOL)を重視していく。本日は、①河川とは、②河川事業の基本的考え方、③事業の概要、④インフラ分野のDX、⑤設楽ダム工事事務所の取り組み事例、についてお話させていただく。
 河川は上流部から小さな河川が合流し、この合流を繰り返しながら徐々に海へ向かうにしたがい、大きな河川となり、これら一群の河川を合わせた単位を「水系」と呼ぶ。河川管理上の区別としては、国が管理する一級水系(全国109水系中、豊川は幹川流路延長64位、流域面積78位)、都道府県知事が管理する二級水系(全国2,713水系)、それ以外の単独水系がある。一級水系の管理区別としては、大臣管理区間(国)、指定区間(都道府県)、準用河川・普通河川(市町村)の区分けがあり、国が管理する設楽ダムや寒狭川頭首工の一連区間は、指定区間内であっても大臣管理区間となる。河川事業の基本的な考え方は、洪水氾濫を未然に防ぐ対策としての堤防整備や洪水調節施設の整備、並びに気候変動を踏まえ、集水域から氾濫域にわたる流域に関わるあらゆる関係者が協働して、流域全体で行う総合的かつ多層的な水災害対策である流域治水の推進である。
 豊川は、源を愛知県北設楽郡設楽町の段戸山に発し三河湾に注ぐ、幹川流路延長約77㎞、流域面積724㎢の一級河川で、流域には59万人(3市1町)の人々が生活しており、この地域の産業・経済・社会・文化の発展の基盤を築いてきた。設楽ダム建設事業の目的は、洪水時に水量を調節して、河川の整備と併せて豊川流域の洪水被害を軽減すること、渇水時にも豊川に一定量の水が流れるようにすること、東三河地域に新たな水道水と農業用水の供給を可能にすることである。設楽ダムの形式は重力式コンクリートダム、堤高は約129m、流域面積は約62㎢、湛水面積は約3㎢、総貯水容量は9,800万㎥、洪水調節容量は1,900万㎥となっている。豊川水系は全国的に見ても渇水が頻発する地域であるので、水の大切さは皆様十分ご承知のことと思うが、地球上に存在する水の量を500mlペットボトル1本分とすると、湖沼水又は河川水として存在する淡水の量はそのうちわずか1滴程度であることを是非ご認識いただきたい。設楽ダム建設事業の経緯は、平成15年4月に建設事業に着手、平成21年2月に損失補償基準妥結、ダム建設同意調印から平成29年3月の転流工工事着手、令和2年3月の左岸頂部掘削工事着手と、令和8年度の完成を目指して工事を進めている。総事業費は約2,400億円で、令和2年度までの予算執行状況は約1,160億円(進捗率約48%)となっている。
 DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みについては、3段階で進めて行く必要があると言われている。1段階目がデジタイゼーション。これはアナログ情報の単なるデジタル化。2段階目がデジタライゼーション。デジタル技術による業務効率化や生産性の向上を指す。DXに取り組んでいると言っても大体が2段階目止まりの組織が多いそうだ。3段階目がDX。顧客の満足度向上や、組織の文化・風土の変革までつながって初めてトランスフォーメーションである。我々もまだまだ2段階目だが、真のDXとなるよう取り組んで行きたい。
 以上を踏まえ、インフラ分野のDXとしては、働き方の変化や社会のデジタル化の加速という社会経済状況の激しい変化に対応し、データとデジタル技術の活用でインフラまわりをスマートにし、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスにおける従来の「常識」を変革する取り組みを行っていく。行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革としては、特車通行手続き等の迅速化、港湾関連データ連携基盤の構築、ITやセンシング技術等を活用したホーム転落防止技術等の活用促進、ETCによるタッチレス決済の普及などが挙げられる。また、ロボット・AI等活用による人の支援、現場の安全性・効率性の向上としては、無人化・自律施工による安全性・生産性の向上、AI等による点検員の「判断」支援、CCTVカメラ画像を用いた交通障害自動検知、モーションセンサー等を活用した人材育成などが挙げられる。デジタルデータを活用した仕事のプロセスや働き方の変革としては、衛星を活用した被災状況把握、監督検査の省人化・非接触化、日々の管理の効率化が挙げられる。DXを支えるデータ活用環境の実現としては、社会課題の解決策の具体化、データ活用の基盤整備、3次元データ等の保管・活用環境の整備、インフラ・建築物の3次元データ化などが挙げられる。
 設楽ダム工事事務所の取り組み事例としては、3Dモデルによる設楽ダム建設前後の鳥観図作成、付替道路に関する説明資料について一般の方々ではなかなか理解しづらい製図ソフトによる従来型の平面図から3Dモデルによる鳥瞰図へと刷新、設楽ダム周辺地形模型とプロジェクションマッピングを組み合わせた各種プレゼンテーションを行っている。また、検討業務における3次元データの活用、工事現場における施工手順3次動画の活用、施工現場におけるAI・3次元モデル・機械化による作業の効率化などの取り組みを行っている。