1. HOME
  2. ブログ
  3. 東三河懇話会の活動
  4. 産学官民交流事業
  5. 2023.04.25 第462回東三河産学官交流サロン

産学官民交流事業

2023.04.25 第462回東三河産学官交流サロン

1.日 時

2023年4月25日(火) 18時00分~20時30分

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授 北崎 充晃 氏

  テーマ

『バーチャルリアリティとメタバースの心理学』

  講師②

アイアンマン70.3東三河ジャパンin渥美半島 実行委員会  吉村 純 氏

  テーマ

『アイアンマン70.3東三河ジャパンin渥美半島の概要と将来展望について』

4.参加者

100名(内、オンライン参加者 11名)

  ※講師②は、吉村 純氏から 副実行委員長 上用 敏弘氏に変更になりました。

開催案内(ダウンロード)

講演要旨①

 私の元々の専門は心理学(視覚心理学)であるが、現在はバーチャルリアリティ、視覚、メタバースの研究を行っている。
 心理学とは、何か。一般的なイメージは、人の心を明らかにすること。普通は自然な環境で、自然なコミュニケーションで人の心がどうなっているかが分かる。これが基本的な心理学の原則であるが、近年、人は変わることが分かってきた。この3年間、マスクをするだけで実は人間の知覚や行動範囲などがかなり変わってきた。赤ちゃんが、お母さんと他人を見た場合、普通は自分のお母さんの顔をよく見る。ところが、東京の赤ちゃんはマスクをしていればお母さんの顔を見るが、マスクをしていない他人と比較するとお母さんを多く見ないような研究もある。他には、色をうまく認識されない方がテクノロジーを使ってカメラの映像を音に変えて聞きながら行動するという事例があったり、ロボットのアームを第3、第4、第5、第6の手として使っていろんな作業をしたり、ダンスをするというような、新しい人間に対する心理学というニーズがこれからはあるのだろうと考えている。
 環境も変わってきている。歴史ある古代の土地に対し、シンガポールはグリーンと人工物がうまく融合した建築物を造っている。そしてメタバース。一人一人は別の場所にいるが、メタバース空間ではアバターという姿に変わってコミュニケーションしたり、遊んだり、お話をしたりする。このような心理学をもっと調べていかなければいけないと想い、今研究を進めている。
 メタバースの基礎となる一つが、バーチャルリアリティである。バーチャルリアリティは、30年以上の歴史がある。メタバースとは何かというと、バーチャルリアリティを体験している人が世界中に沢山いて、一つのサイバースペースに集まってコミュニケーションする場である。つまり、バラバラだった空間が一つに合わさり、時間と空間を超えてインタラクションする。実際、このような中で、かわいい系のアバターを着てインタラクションしているのは、今の日本の若者が大勢居る。アバターの面白いところは、何にでもなれること。バーチャルな情報を使って、いろんな身体を自分の身体のように感じることが出来る。私の研究の中心テーマの一つは、どのような身体を自分の身体に出来るかということである。メタバース空間の中の授業では、いろんな場所から好き勝手に見て、動いたり近づいたりすることができるようになる。豊橋技術科学大学と長岡高専を繋いで使えるような、本学のA101教室のメタバース空間を作った。これ以外にさまざまなメタバース空間を作っているので、こういうところも地域の方々に貢献できるバーチャル設備とし使えるのではないかと思っている。
 バーチャルリアリティで変わる身体と心。最新の研究を少し紹介する。アメリカで行われた「プロテウス効果」では、自己アバターの外見が心・行動を変える。一般的に自分の顔を魅力的にすると、異性に近づき自己開示するようになる。また、スーパーヒーロー体験すると、援助行動が増える。異なる肌色の身体を経験すると、潜在的態度が変わる。そして、私の「透明な身体を使う」という実験であるが、手と足の先だけを提示して自分の身体を一緒に動かすと、真ん中に透明な身体が繋がっているように感じられ、透明人間の錯覚を作り出すことに成功した。他に今一番力を入れているのは、人間の限界を超える、人間の一番の限界は何だろうということで、モーションキャプチャーという全身の身体の動きを計測する装置を使って、2人の身体の平均を取って自己身体にするという実験を行っている。自分一人でやっている時よりも、平均身体の動きはまっすぐで滑らかになり、かつ動き出しの速度も速くなり、2人でやることによってより細かい作業が出来るようになることが分かった。もう一つは、右半分と左半分をそれぞれ分担して行うという研究である。つまり、右手は自分で動かせるが、左手は別のところにいる他人が勝手に動かすという状況である。最先端の義肢研究では、筋電や脳波を使って、自分の意志・指揮通りに義肢を動かすという研究があるが、実はそれほど精度は良くならない。そこで、今の人工知能技術にとって、勝手に掴んでくれたり物が飛んできたら勝手に避けてくれれば、実は自分の意思で一生懸命動かすより精度は良くなるということがあり、そういう時にどういう認知とか知覚が生じるのかということを研究しようと思っている。自分の身体の一部が、自分の意志とは関係なく異なる動きをすると気持ち悪い。しかし、我々の研究としては、他人が動かしていると分かっていても、自分が動かしていると感じさせたい。手を棒で繋ぐと、動くタイミングと方向が伝わり、勝手に動く手が自分のように感じたりする。また、相手のゴールを共有してさえすれば、相手が操作する腕への違和感がなくなって自分で動かしている感じがする。共有は、一体という話につながる。人材不足の時代に、2人で1つは評判が悪い。一方、1人で4つの仕事ができるという分身は評判が高い。全く同じ動きをする4つのバーチャルな身体を用意し、4つの違う場所で同一の操作を行う場合、効率は4倍にはならず、1倍ちょっとという結果であり、まだまだ研究途上だと考えている。
 メタバースの話しに戻る。日本のVR Chatユーザーはほとんどが男性(87%)で、使われているアバターはアニメ風の人型女性アバターが多い。アバター同氏で触る行為の後には、相手の印象が良くなるという結果で出ている。当研究室では、触覚がある条件、いわゆるバーチャルリアリティの条件下で、これを行った後に相手に対する印象がどう変わったかどうかを調べている。メタバース条件では距離が離れていて触覚的には触れないが、視覚的に触られていることで触られている感じになり、相手に対する魅力が上がるというデータがある。他の使い道として、地面に足がついた時に振動を与えると、座っている状態や寝た状態でも歩いている感覚を生じさせることができる。これは、高齢、病気、障害等で歩けなくなった人に歩いた感覚を作り出すことができるとともに、お互いメタバース空間で出会ってインタラクションすることによりウェルビーイングを向上させることなる。メタバース空間の体験は、公共サービスに加え、「クエスト2」なども5万円程で買えて、個人でも体験することができる。
 最後に、東三河発展のための地域への提案や想いを述べさていただく。「VRやメタバースは地域性がなくなる?」と言われるが、メタバースによって時間と空間を超えることができるので、この中にメタバースの東三河を作ることができる。時間を超えられるので、昔の東三河を再現してその中で交流することもできるし、未来の東三河を作ってそこで交流したらどう変わるかということを、実際に都市計画を作る前にVRの中で体験してみるという使い方がある。観光などで言えば、環境破壊せずに体験可能であり、初期の関心を自分事化して高めることも可能となる。豊橋から大学に行って戻って来ない若者も少なくないが、メタバースの中で地域内のコミュニケーションを取ることにより、世代間のコミュニケーションを変化させ得る。VR・メタバースは、資本金、場所・時間に拘束されないので、フリーランスとして参入しやすい。そのおかげで最近は豊橋に戻って来て、東京の仕事を遠隔でやっている人が増えている。

講演要旨②

 6月10日に田原市、豊橋市を舞台にて開催される「アイアンマン70.3東三河in渥美半島」の概要についてご説明をさせていただく。私は、中部国際空港開港5周年となる2010年に常滑に誘致した「アイアンマン70.3大会」に関係しており、現在、一般社団法人東三河スポーツ地域振興財団でお手伝いをさせていただいている。
 アイアンマンは、トライアスロンの最高峰、トライアスリートの憧れの大会である。トライアスロンという競技は、泳いで、その後バイクを漕いで、あとランニングをするという3種目を連続して行う競技であり、伊良湖や蒲郡でも30数回開催されているので、ご存知の方もいらっしゃると思う。オリンピックの競技にもなっているが、結構過酷な競技であり、国内の競技人口は30万人ぐらいと言われている。アイアンマンレースは、スイムが3.8キロ、その後バイクで180キロ、最後に40キロの距離を走るという非常に過酷なレースであり、アメリカに本部があるWTC(ワールド・トライアスロン・コーポレーション)の認定を受ける必要がある。世界各国で大会が開かれており、コースの設定、おもてなし、アクセス、宿泊施設に至るまで、一定のそのクオリティが求められ、それが開催の条件になっている。「アイアンマン70.3」は、アイアンマンの半分の距離で競うもので、2006年に新たに創設をされ、急速に拡大、浸透している。アイアンマンレースは世界で50大会ほどであるが、70.3については100大会以上が開催されている。国内では過去に琵琶湖、五島列島、北海道でアイアンマンレースが開催されており、70.3については2010年から常滑市のセントレアを中心に知多半島で10回ほど開催をされている。
 アイアンマンレースの参加料は、6万円以上と非常に高額である。これにプラスして交通費、宿泊費が自己負担となり、相当高額な出費となる。参加者の属性を見てみると、学歴、所得、社会的ポジションの高い方が結構多く参加をされている。年齢層は20代から、60代、70代、80代という非常に高齢の方も常滑大会では参加されている。先日、田原文化会館において、90歳でアイアンマンの現役である稲田 弘さんが講演されたが、230キロ近くを、17時間を切るタイムで完走するという、まさしく鉄人である。この方は60歳からトライアスロンを始めたということなので、頑張ってみようという方は是非とも本大会に参加いただければと思う。
 本大会への参加希望者は、現在700数十人であり、外国籍、あるいは外国に在住している方が10%以上登録をしていただいており、まさしく国際大会ということになる。国内も、北海道から鹿児島まで38都道府県からエントリーしていただいている。宿泊状況は、1泊、2泊の方が多いが、中には3泊、4泊、一番番長いのは7泊ぐらい滞在し、大会に出るだけではなく、その後の観光を目的として外国から来られる方がいるのもこの大会の特徴かと思う。
 本日コースを発表したが、まず田原市の白谷海浜公園で泳ぎ、泳ぎ終わった選手は同海浜公園内でバイクに乗り換え、渥美半島をちょうど時計周りで一周するコースを設定している。その後、同海浜公園に戻り、そこでバイクを置いて走り始め、ゴールとなる豊橋総合スポーツ公園を目指すというコースとなる。朝6時からコースで使う部分について交通規制をさせていただくが、選手の通過により順次解除していく。最初はおよそ3時間近くの規制時間となり、後半は徐々に選手がバラけるので、長いところで6時間近く交通規制をさせていただくことになる。道路を使われる方にはご迷惑をお掛けすることになるが、今後、しっかり周知させていただく。
 主催者は12団体で実行委員会を構成しており、石黒 功様に実行委員長をお願いしている。事務局は私ども財団が行い、大会名誉会長を大村知事にお願いをしており、愛知県、田原市、豊橋市、それと実行委員会を構成している各団体に非常にご支援、ご協力をいただいている。大会関係者もいろんな方に参加いただくことになっており、泳ぐところの安全対策のためのライフセーバー、医療関係、審判、警備員等である。また、大会運営補助を行う1,500名程度のボランティアを関係団体、産学官いろんなところに協力依頼を行っている。また、レース終了後の表彰式やパーティーを豊橋駅周辺の複数施設で展開したいということで、今準備を進めている。大会予算については、警備員などいろんな方が相当関わってくるので経費が結構かかるが、選手の参加料、協賛企業からの協賛金、並びに企業版ふるさと納税で賄っている。引き続き募集中なので、ご協力いただける企業の方がいらっしゃったら、是非ご協力をお願いしたい。
 一般社団法人東三河スポーツ地域振興財団は、何を目指しているか。政府は観光立国、要は地域の観光資源、自然環境、歴史的遺産、風土、レジャー施設、食などいろんなコンテンツがあるが、これらをしっかり整備して観光客を誘致し、観光による経済効果、これをその国とか地域の経済基盤にしようということで取り組んでいる。観光と健康、農業というコンテンツを掛け合わせて、例えばヘルスツーリズム、アグリツーリズムなどということで取り組んでいるが、観光とスポーツを掛け合わせたのがまさしくスポーツリズムである。スポーツを実際に行い、支えることにより、経済効果を高め、交流人口を増やし、施設の環境整備を行うということを束ねる役割を地域のスポーツコミッションは担っている。私ども財団は、これから地域の中核になるような活動していきたいという想いで、昨年7月に武蔵精密工業株式会社と株式会社サーラコーポレーションの2社が設立者となり、財団を発足させた。財団の目的は、今回のような国際的な大会を誘致し、大会の開催を通じてグローバルな注目をこの地域に集めることである。国内外から多くの方に訪れてもらい、温かいおもてなしをして、またここに行きたい、あるいは東三河が大好きだという人を増やしていきたい。さらに言うと、訪れるだけじゃなく、ここに住みたいという方が多く出てくるよう活動を財団の中でこれからやっていきたいという想いである。まずは6月10日の大会を事故なく運営すべくしっかり準備し、参加する選手の皆さんから「非常に良い大会だったね。コースも良いし、おもてなしも最高だった。来年も是非参加してみたい。仲間にも声をかけてみよう。」と思っていただけるような大会にしたいと考えている。地域の皆さんやコース沿道の皆さんには交通規制などでもいろいろご迷惑をおかけすることがあるが、一方ではボランティアなどの活動、あるいは沿道の声援などを通して、選手とともにも感動を実感していただく、「地域のスポーツ大会」として良い大会になってほしいという願いで今準備を進めている。
 本大会終了後の財団の活動は、本来の目的であるスポーツを通じて、地域振興に向けたいろんな取り組みを実行していきたいと考えている。例えば、スポーツ教室などを開催して地域の健康増進に寄与する、いろんな大会を誘致する、あるいはスポーツの合宿を誘致することで交流人口を増やしていく、また外国選手がいらっしゃるので、国際交流あるいはその通訳ボランティアについても何か補助をしているということができないかなとも考えている。また、選手の皆さんとの交流イベントの開催、沿道の整備、緑化など、いろいろ取り組んでいきたいと考えている。財団が出来たばかりで十分な活動が出来ていないが、これからスポーツを通して地域の創生に少しでもお役に立てるような活動を行っていきたいと考えているので、温かい目で財団へのご支援、ご協力をお願いしたい。