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産学官民交流事業

2024.03.19 第473回東三河産学官交流サロン

1.日 時

2024年3月19日(火) 18時00分~20時30分

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

愛知工科大学 工学部機械システム工学科 教授 大平 哲也 氏

  テーマ

『エンジンがつくるカーボンニュートラル社会』

  講師②

パーソルテンプスタッフ(株) 地域共創企画室室長 立山 正道 氏
    同      豊橋オフィスマネージャー 加藤 久貴 氏

  テーマ

『「はたらいて、笑おう」からはじまる地域共創』

4.参加者

51名(オンライン7名含む)

講演要旨①
 本日は、自己紹介を簡単にさせていただいた後に、自動車と地球環境の状況、環境対策の方向性ということで、カーボンニュートラル、その燃料が果たす役割を説明し、最後に私の研究内容を紹介しようと思う。
 愛知工科大学は、学生1,000人に対し、およそ100人の教員で運営している。アピールとしては、面倒見の良い大学ということで、学生一人ひとりの個性を重視した教育を行っており、近隣の蒲郡市や幸田町に協力いただいて地域振興の授業も実施している。
 私は自動車メーカーのスズキに入社して、二輪のエンジンの実験や解析をやっていた。その間大学に出向いて共同研究を行い、博士号を取得した。アメリカGMへの駐在を経て、四輪エンジン開発に従事した。四輪のエンジンは、エンジン1基を開発すると1,000万台の車に搭載されるため、1,000万台の品質を保証するエンジンにしなければならないというプレッシャーを感じながらやっていたことを今も思い出す。定年退職する7年前ぐらいからは品質保証の部署において、トラブルの解析など行っており、品質に関係するところを入社してから一貫してやってきた。
 またAICEという日本の乗用車メーカー8社で作った自動車内燃機関技術研究組合に、初期メンバーとして参加し、他社の社員と議論して立ち上げた。これまでの日本にない同業各社で組めるところは組んで進めるという組織であり、とても良い経験になった。こうした経験を活かして今大学教育に取り組んでいる。
 地球上に自動車がどれぐらいあるかというと、人口80億人に対して自動車が15.7億台ある。保有率でいうと、10人に2台である。日本は人口が減ってきているが、1.2億人の人口に対して8,000万台であり、保有率は10人に6台となる。今後、全世界において日本並みまで増えるかはわからないが、自動車は高い利便性ゆえ、新興国中心に今後も増え続ける見込みである。保有台数を国別に見たときに注目すべきはインドである。保有台数は今のところ4,500万台で世界8位であるが、保有率は1,000人に30台でしかない。10人に0.3台となる。こうした国のGDPが上がり、今後どうなるかが注目される。GDPパーキャピタといって、1人当たりのGDPと自動車保有率は相関関係がある。GDPパーキャピタでいうと中国はようやく1万ドルぐらいになったが、インドはまだ数千ドルである。インドは経済成長しており、仮にロシアを追い越すぐらいになると、台数は飛躍的に増加する。インド以外も中国、他の東南アジアの国々のGDPが伸びることを踏まえると、自動車保有台数がさらに10億台ぐらい伸びるという状況である。
 一方、二酸化炭素の空気中の濃度が高まっており、490ppm以下に抑えなければならないが、2022年時点で既に420ppmとなっている。世界のエネルギー供給量の推移を見ると、石油・石炭・天然ガスという化石由来のエネルギーが依然一番多い。再生可能エネルギーが増えているといわれるが、バイオ燃料や風力、太陽光など、まだ僅かであり桁が違う。日本において自動車の排出しているCO2量は全体の15%ぐらいであるが、しっかり削減していかないと国のCO2削減目標を達成できなくなるため、自動車の環境対策の話をする。
 自動車は発明以来、いろいろな技術開発を重ねて現在に至っている。安全性・利便性・環境問題などひとつずつクリアしてきた。19世紀初頭、蒸気機関を積んだ自動車が初めて世に出た。この頃は、環境というよりきちんと動くかが課題であった。その後、いろいろなタイプのエンジンが出てきた。今、話題になっている水素エンジン、EVも19世紀に登場した。使い物になったかは別として走ったということである。その後、オットー氏が今の4サイクルエンジンの原型を考案して試作した。またディーゼル氏がディーゼルエンジンの原型となる圧縮自着火エンジンを作り、20世紀に至る。
 20世紀になって、自動車は普及期を迎えた。有名なのはT型フォードである。フォードはT型フォードで大量生産の仕組みを作り、1モデル19年間に1,500万台が生産された。その後出たワーゲンビートルは、1モデル65年間かけて2,150万台が生産された。この比較から、T型フォードのすごさが理解できる。ちなみにトヨタカローラは55年かけて5,000万台を達成している。このように、20世紀は自動車が普及した時代であった。一方、都市部の大気汚染が、環境問題、社会問題となった。そのため、アメリカで有名なマスキー法ができ、燃料噴射制御や三元触媒を使った排気ガス浄化システムがどの車にも搭載されることとなった。自動車に対する人々の意識も変わり、製造販売するだけでなく環境保護を保証しなければならなくなった。また生産性が向上し、製品の品質安定、制御の利用と技術が進展し、普及していった。
 21世紀は、転換期としてハイブリッドカーが誕生、CO2排出削減に対するチャレンジが始まり、CO2排出削減をしないと車を売ることができないという時代になった。これからは地球に迷惑をかけない、環境汚染しないということで大転換となったのである。自動車にとって各時代をまとめると、19世紀は馬など家畜に頼らない機械による利便性を求めるとともに、出力向上が課題であった黎明期。20世紀は内燃機関搭載自動車が一般家庭にまで普及し、自動車の排気ガス有害物質による公害が問題となった普及期。21世紀は排気ガス浄化、燃費向上の技術が全車適用となる中で、地球温暖化が世界的な課題となり、CO2排出実質ゼロが目標となる大転換期になった。
 先進国は2050年に温室効果ガスの排出をゼロにしようと動いている。日本政府も2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体でゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。欧州議会・EU理事会はもっと厳しく、2022年10月に、2035年以降はエンジン搭載車の生産を実質禁止することを確定させたが、その後2023年3月に合成燃料を使用する車に限っては販売できるよう緩和した。温室効果ガス排出ゼロとはどういうことかというと、燃料の作り方を変えることである。運輸部門で2050年までに今の化石燃料から、水素で動かす、電気で動かす、バイオ燃料で動かす、この3つに変えていかないと車が売れなくなる。
 車のCO2排出は、使っているところだけでなく、作る・運ぶ・使う・捨てるなど全部のサイクルを見る必要がある。原材料、部品の製造から廃棄、燃料や電気の供給まで含めたライフサイクルアセスメントで自動車から排出されるCO2を評価する形となる。例えば燃料でいえば油田から採取など燃料エネルギーを作るところから船舶で運ぶところ、ガソリンスタンドなどで車に届けるところまで、電気に関しては送電網まで入ってきて、自動車製造では、材料から素材部品、組み立て工場が入ってくる。このライフサイクルアセスメントの過程全体で温室効果ガスをゼロにしようという取組である。方向性としては3つあり、1つ目は温室効果ガス、CO2の排出を削減してゼロにしていくこと。2つ目は、エネルギーをなるべく使わないように効率化すること。3つ目は再生可能エネルギーを積極的に作って使うということである。自動車は既にCO2排出削減を取り組んで、燃費を20年ぐらいかけて30%ぐらい向上させてきた。さらに何をすれば良いのかというと、貨物輸送については、なるべく大きなトラックを使って遠くに運ぶということになり、共同輸送として同業他社と荷物を一緒に運ぶ、帰りは別の部品を運んで帰るといった輸配送の共同運営化が進まなければならない。旅客輸送に関しては、自動車は非常に効率が悪いため、できるだけバスや鉄道に移すモーダルシフトを社会的に実施していく必要がある。
 自動車製造工場においてCO2排出削減をいろいろやっている。工夫して製造ラインを短くしたりするのも、CO2排出削減に効く。多くの自動車製造工場は再生可能エネルギーの太陽光や風力を導入し、製造時に消費する電力・燃料等の削減に取り組んでいる。電気自動車の販売台数が、2022年全世界で1000万台を超えた。保有台数は圧倒的に中国が多い。中国・欧州・アメリカという順番で、この3地域が全世界のEVの大半を占めており、保有台数は2,000万台を超えた。EVのメリットは何か。エンジンは、始動直後の冷えているときの効率が悪い。冷機短距離走行は燃費が悪く、CO2排出量が多くなる。この冷機短距離走行はEV走行にメリットがある。EVはどの国でも良いかというと、国ごとの発電の状況で異なっている。EV化によるCO2削減効果が大きい国は、水力発電が多いカナダやブラジル、原発での発電比率が高いフランスなどである。電気を化石燃料で発電している国では、EV化してもCO2は減らない。また、発電にかかるコストもあり、日本は石炭や天然ガスで発電しているので、電気代が高騰していないという側面もあるため、太陽光や風力が増えていくと電気代が上がっていくことになり、技術革新が必要になる。
 エネルギー使用の効率化として燃費の向上がある。車のボディも、燃費の向上には重要である。この20年間かなり努力して、乗用車は燃費が倍ぐらいになっている。車体が軽い車ほど燃費が良く、軽量化すれば消費エネルギーが減る。車を軽量化して作れば良いが、現在システムが複雑化するような方向にいっているのは残念である。スズキはCM等で、「小さなクルマ、大きなみらい」といっている。これを実施していけばCO2はかなり減る。行動指針は「小少軽短美」ということで、小さく少なく、軽く、短くちゃんと整えて売るいうことであった。こうしたことやっていくのが、もう一度見直されてきている時期だと思う。空力抵抗や転がり抵抗などの要素も含めて、同じ距離を走るのに少ないエネルギーで走らせようとすることが大事になる。エンジン車の燃費技術についても、エンジンの中身についてもたくさんの要素があり、自動車は多くの部品が関わるため、多岐にわたる部品で多くの技術開発が必要になる。
 3番目の柱として、燃料を再生可能エネルギーに切り替えていくということで、合成燃料が今開発されている。大気中からCO2を回収して固定化、水を電気分解した水素と化学反応させ炭化水素の燃料を作るものである。ドイツとチリが共同プロジェクトとして、「Haru Oni」という共同プロジェクトで合成燃料を作るものが実際に動いている。もうひとつはバイオ燃料である。これは大気中の二酸化炭素を吸収して育った植物をもとに燃料を作るものである。両者に共通する課題はコストである。合成燃料はエネルギーあたりの単位メガジュールで5.4円かかっている。バイオ燃料は3.4円ぐらいでできるが、現在のガソリンは2.5円である。合成燃料をうまく作れたとしても、倍以上のコストになっており、燃料を大事にしなければいけない度合いが、将来的に大きくなると思っている。
 ライフサイクルアセスメントで車のいろいろなタイプを評価すると、EVはCO2を出さないといっているが、実は製造時にかなり出している。車に乗っているときもCO2を出していないように見えるが、電気を作るために発電所で出しており、日本ではプラグインハイブリッドやハイブリッドの車よりもEVはCO2を排出している。ガソリンエンジンの車はCO2を出しているが、走行時出しているCO2を、カーボンニュートラル燃料やバイオ燃料などの合成燃料に置き換えれば、CO2を排出しない車に変わる。EVに対して国や自治体はEVに補助金を出しているが、税金もEVではあまり取れないこともあり、持続可能か考える時期ではないかと思う。地球環境保護のために自動車は、エンジンとモーターをうまく使うことが必要になる。燃焼を利用するエンジンは、熱効率の向上とカーボンニュートラル燃料の使用促進。電気を利用するモーターは電気消費率の向上、発電時のCO2削減、低CO2電気の使用促進が重要である。加えて安定した品質で利用できる設計・製造・サービスおよび再生の技術の開発をしなければならない。
 最後に、カーボンニュートラル燃料をエンジンで問題なく使うための研究の話をする。品質問題は企業にとってはかなりインパクトが大きい。国土交通省が発表している自動車のリコールの件数を見ると毎年600万台ぐらいリコールされている。日本国内の新車販売台数は年間400万台程度であり、それよりリコール台数の方が実は多いのである。リコール対応には1台あたり1万円以上かかるため、企業業績へのインパクトも大きく、何百億円もの損失となることもあり品質は非常に大事である。私は最初の経歴で話をしたように、品質の視点を大切に、研究をやりたいと思っている。開発や評価をするときには、環境条件や誤差の見積もりをして開発する。製造現場の検査は、変化点やバラつきなどで品質を作り込むようにしている。といっても客先では想定していない使用条件や耐久劣化がある。そうした部分を技術で解決し届けなければならない。
 カーボンニュートラル燃料はどのような品質の懸念があるか。水素はシールしにくいのでリークの問題がある。また燃焼速度が速く安定燃焼が難しい。アンモニアも毒性がある、発熱量が低い、NOxが出やすい。アルコール系も低沸点であり、エタノールは食料との競合がある。私が研究しているのはメタノールを使ったエンジンである。メタノールは低温で蒸発しにくい、気化潜熱が大きいので、蒸発したときに熱を奪う、燃えたとしても発熱量が低いため、エンジン冷機時の燃焼が非常に困難であるといった課題がある。実際のエンジンを使って、どれくらい蒸発して発熱するか、どれくらいクランクケースに落ちてエンジンオイルを希釈するかなど詳しく調べている。始動時から、吸気温度などエンジン各所の温度を調べ、燃焼を解析している。排気ガス中の有害な成分の増加の有無も調べて、新たな排気ガス浄化の課題を抽出している。今後、燃料の蒸発を助けるディバイスなど調査していきたいと考えている。最後に地域のエネルギー再生の取組について紹介する。
 これは蒲郡市のサーキュラーシティに合わせた研究である。蒲郡市はみかんの産地であるが、流通する以外に廃棄されているものが結構ある。これをうまく発酵や燃料化できれば良いと考えた。廃棄量を学生とフィールドワークを兼ねて調査、1年間測って出荷の2割弱くらいが廃棄されていることがわかった。これをどうするかが今後の検討対象といった状態になっている。最後に私の心構えであるが、研究では困りごとをテーマにして、現場に解決の糸口を示すことを心がけていきたい。教育は学生が卒業したら終わりではなく、大学が教育を受ける場の最後となるため、生涯何かあったら相談に乗るという生涯メンターの役割を果たしていきたいと考えている。

講演要旨②
 本日は「『はたらいて、笑おう』からはじまる地域共創」というテーマで、人材業から地域共創、地域の活性化につなげるという話をする。最初に、パーソルグループの概要、豊橋オフィスの紹介、地域の課題と脅威、地域共創企画室が作られた背景を加藤から説明する。
 まず当社が所属しているパーソルグループの概要から説明する。パーソルという言葉は、パーソンとソリューションというのを掛け合わせた造語である。人は仕事を通じて成長し(PERSON)、社会の課題を解決していく(SOLUTION)。PERSOLというグループ名には、働く人の成長を支援し、輝く未来を目指したいという想いが込められている。テレビのCMで「はたらいて、笑おうパーソル」というのを聞かれたことある方もいらっしゃると思う。こちらはパーソルのグループビジョンで、常に社員は意識して、こうした世界を実現したいと思っている。個人的には、この「はたらいて、笑おう」の順番が重要だと思っている。というのは、働いている時は楽しいことばかりではない。うまくいかないことやつらいことがあると思うが、それを何とか努力し、試行錯誤して乗り越えた先に笑っていられる状態があると思うため、「はたらいて、笑おう」は世の中の働いている方全てに捧げたい言葉と思っている。
 当社では最近新しく「“はたらくWell-being”創造カンパニー」という言葉もある。今多様性という言葉をよく耳にすると思うが、一人ひとり働き方や活躍の仕方が違うと思う。一人ひとりの可能性を広げ、働く自由を広げ、個人と社会の幸せを広げる 。こうした世界をパーソルとしては作っていきたいと思っている。
 1973年にテンプスタッフという会社が設立されたのがパーソルグループの始まりである。篠原欣子という女性創業者がオーストラリアに海外留学し、人材派遣の原型のようなものを体験したことがスタートである。日本では、まだ女性が活躍できる社会ではない時代に、オーストラリアは女性の社会進出が進んでおり、何とかそれを日本に持ち込みたいと考えて、日本に持ち帰り、そのシステムを確立したのが、パーソルグループの始まりである。
 主要会社は、元テンプスタッフであるパーソルテンプスタッフと元インテリジェンスであるパーソルキャリアの2社という形になっている。グループは、SBU(Strategic Business Unit)方式で経営している。セグメントごとに経営しており、パーソルテンプスタッフが所属しているセグメントでは、人材派遣や紹介予定派遣のサービスを行っている。BPOセグメントはビジネスプロセスアウトソーシングで、業務委託や請負であるが、こちらが最近増えている。人を派遣するのではなく、業務の一部分を丸ごと担うサービスである。
 テクノロジーセグメントでは、ITやデジタルの力を使って実際にシステム開発を行い、クライアント企業のデジタル化のサポートをしている。キャリアセグメントでは、パーソルキャリアが主体となって人材紹介、求人サイトの運営を行っている。名前を聞いたことがあるかもしれないが、デューダという名前で求人サイトの運営もしている。他にも海外事業や、パーソル総研というシンクタンクも持っており、人材に関する情報を研究して提供するなど、グループ全体で幅広く取り組んでいる。
 次に豊橋オフィスの紹介をする。豊橋オフィスでは、「オフィスビジョン」をメンバーと考え、それに基づいて活動をしている。その内容は「地域の雇用を支える人材会社になる」「スタッフ、企業から信頼されるパートナーになる」「挑戦と成長を楽しむ集団になる」この3つである。事務所は大橋通の静銀日生ビルにあり、営業が7名、コーディネーターが3名在籍している。営業7名は、実際に企業を回って求人をいただいてくることと、企業で働いている派遣スタッフのフォローやサポートをする業務に携わっている。コーディネーターは企業からの求人と、仕事を探している人のマッチングをやっている。合計10名であるが、半数以上が地元出身で、地元愛にあふれるメンバーである。メンバーと話をしていると、「地元で働く方々を応援したい」「地元で気持ちよく前向きに働いてほしい」「地元の企業のお手伝いをさせていただきたい」といった想いをとても強く持っている。地域の派遣を支えるではなく、雇用を支える人材会社というのがポイントである。現在のカバーエリアは豊橋市・豊川市・蒲郡市・新城市・田原市・湖西市といったところである。取引社数として、当社の派遣スタッフが毎日のように就業している会社が195社であり、就業されている派遣スタッフの人数は605名である。
 他の派遣会社も含めた東三河エリアの派遣求人数を過去4年間で見てみると、最近は大体800~900件ぐらいの求人数が毎月出ている状態である。2020年4月にコロナが直撃した頃は、求人数300~400件程度に減ったこともあり、その頃からすると今は倍以上に求人数が増えている。コロナ以前の求人数は600件程度と記憶しており、足元ではコロナ前を超える求人数となり、人手不足が深刻化している。豊橋オフィスでは2023年度の1年間で延べ800名の求人をいただいた。新たに派遣を開始することを派遣雇用創出数と呼んでいるが、こちらが1年間で延べ381名である。月間では大体35名、営業日でいうと毎日1人以上の方が新たに派遣を開始している計算になる。最近の傾向として、派遣社員の方を直接雇用に切り替えるケースが大変増えており、直近の2年で36%増加していて、これを「地域の雇用を支える人材会社になる」ところにつなげたいと考えている。こうした傾向については、いくつか要因がある。派遣社員の方を直接雇用に変更されるケースは以前からあったが、派遣会社側は5年前ぐらいまでは少しネガティブな印象を持っていた。それは、人を取られてしまうというような感じで、企業側も若干ひけ目を感じながら相談をいただくケースが多かった。最近の2年ぐらいは、当社が積極的に推進して、企業が賢い人材の採用をされることを実感している。というのは、人材採用はコストがかかり、リスクもある。せっかく入社したのに短期で退職されるケースもある。派遣で例えば1年就業されていると、大体企業に合うかどうかということはわかり、パフォーマンスも大体読めるため、派遣の方を直接雇用に切り替えるのは、企業にとってリスクが低く、確実な採用手法になってきている。また、派遣社員の方もステップアップしたいという思いがある。もっと今いる会社で活躍したい、貢献したいと思い、企業側からも、もっと活躍してほしい、もっと長くいてほしいと要望があり、両者の思いをマッチングさせるということが「“はたらくWell-being”創造カンパニー」に結びつくと思って推進している。
 派遣から直接雇用されるケースの後押しをしているのが、政府の正社員に切り替えた場合の助成金である。こちらは、事前に計画を出さなければならない、直接雇用にされたときに賃金が上がっているなどの条件があり、全部が当てはまるわけではない。こうした助成金を活用して上手に人材採用をされている企業も多いため、皆さんの会社もこうした方法を検討いただけると良いと思っている。
 次に地域共創企画室の立山から、地域の課題や脅威の話をする。皆さんご存知の通り、人口減少で労働人口がどんどん少なくなっていく。また東京への一極集中が続いており、地方は、財政が圧迫され疲弊していく。都市部、地方ともに課題が存在しているが、地方の課題が特に深刻化している状況であると思う。労働力の不足、後継者不足、働く場所がない、働き方の多様化の低下、地方経済・社会の持続可能性の低下など、人口減少を起点としてさまざまな問題が起きている。将来の人口の推移を見ると2050年に日本の人口は1億人程度になると予想されており、生産年齢人口も減少していく。2045年には7割以上の市町村の人口が2割減となり、65歳以上の人口が50%占める市町村が3割近くになり、市町村を存続させることが難しくなってくる。
 地域共創企画室が作られた背景は、このままでは人口減少を起点として、採用の難易度が上がり、企業経営が悪化、事業所が撤退、そして税収が減少し財政が圧迫されるなど地域経済は減退していくと考えられ、この脅威に対して新たな取組を検討していく必要があると考えたことである。当社は人材会社であり、日々企業と情報交換をしており、採用難易度の悪化、企業経営の悪化に対応して、それを少しでも緩やかにしたいと考えている。新たな取組として、パーソルだけではできないことを、地域の企業などと連携することによって補っていけると考えている。そのためには、情報を集約化し、企画する部門が必要ということで組成された。今後に関しては、自社最適ではなく、地域最適という視点で事業運営をしていかなければ、企業や地域の存続が難しいと思っている。
 地方創生と地域共創の違いを、当社はこのように整理している。地方創生は、トップダウン型で行っていく意味合いが強いと思っている。地域共創の共創というのは、ボトムアップ型で、地域の皆さんと仲間になり、一緒に活動していきたいという想いを込めて、地域共創という言葉を使っている。当社は47都道府県の中の43都道府県に拠点を構えており、他の派遣会社と比べると地域密着という意識が創業者の篠原の想いとして強くあった。こうした意味も含めてボトムアップしていきたいと思う。まず企業と向き合っていきたいというところから、事業課題からのアプローチ、マスとして取り組んでいく地域課題のアプローチ、この両輪を回していきたいと思う。事業課題に関しては、加藤からも説明したように、人と組織に関するソリューションを当社は持ち合わせており、人事課題に関しては、課題解決としての支援ができている。今後ビジネスモデルが変化していき、不確実性の高まりを考えた場合、人事課題だけを解決していても企業活性化に貢献はできない。連携して共創パートナーとなり、サービスをお届けする視点としてビジネスマッチングに近い取組を行っていきたいと考えている。当社の売上にならなくても、地域の企業と連携することによってその企業の売上への貢献や、事業共創をすることで雇用を生み出すことに価値があると考えている。当社は相談をもらうという観点ではなく、一緒に作っていくスタンスで取り組み、企業の活性化に貢献していく。これを続けることで企業の活性化には貢献できると思っているが、マスとして地域全体の活性化には届かない。地域の課題は、県の課題なのか、市の課題なのか、また地域全体としての課題なのか内容によって取り組むべき事柄が変わる。あえて抽象的な表現にしているが、地域共創では人手不足が必ず課題として入ってくると思うため、当社が介在する価値はあると確信している。
 ここで事例を紹介する。1つ目は東京都渋谷区の連携事例である。当社の本社は東京都渋谷区にあり、元々良好な関係であった。渋谷区は、Googleや、ITベンチャーなどが集まっているエリアになり、スタートアップが集まることに関しての課題感はないが、スタートアップの事業成長がなかなか難しいという話があった。当社は人材会社であり、人材の相談を全てサポートするというHRコンシェルジェサービスを行っている。相談を受けてアドバイスをするのみで終わるケースもあるが、無料で相談ができることがスタートアップの企業にとって価値があるという話をいただいている。
 次に福岡県の事例を紹介する。こちらは産学館と連携をしている事例であるが、九州大学発スタートアップ支援として自治体・大学・経済団体・地場大手で有機的に連携を強化し、人材マッチング・JOB創出・人材育成・各種機能整備を行うものである。九州大学には、優秀な学生や先生はたくさんいるが、ビジネスに詳しい方が存在せず資金を集められない、事業計画を描けないといった課題があった。こうしたところに関して、都心部の人を副業人材としてマッチングするという事業である。もうひとつは、リカレント教育をして福岡でそういった方を育てていこうという取り組みである。九州大学のリカレント教育の機能を使って中小企業連合会の皆さんに参画いただき、越境留学として中小企業に入って経営課題を解決・支援をするプログラムにおいて、当社が人材会社としてメンターを務めている。さらに、CXOバンクということで記載しているが、九州大学発のベンチャー企業を支援してくださいということで募集をすると、10名の募集に対して400人くらい応募がある。残りの390人も非常に優秀な方であり、リリースしてしまうのはもったいないということで、福岡県の皆さんと話をしてCXOバンクを事業化、当社が事業運営を業務受託という形でやっている。応募者は東京都内など関東の方も多いが、半分近くが福岡県にゆかりがあり、今後の移住定住につながるという観点で福岡県の事業として実施している。産学官連携によって地域の課題と向き合っていく場合、当社は人の部分を支援することによって解決の役に立ちたいと考えている。
 次に事業課題軸の話をする。一つ目がCAMPFIREというクラウドファンディングの会社との連携である。当社が人材の相談を受ける中で、資金の話があっても何も対応ができないというケースがあった。自社だけでは持ち合わせないソリューションとして資金調達、商品PR、ファンマーケティング等について連携することにより、地域企業の成長プロセスを支援することによって、雇用創造を実現できた事例である。資金調達後は人が必要になることもあり、親和性があるため連携を加速している。
 最後に豊橋市における事例を紹介する。豊橋ステーションビルと当社で現在相談しながら開発中の事例である。豊橋ステーションビルの行動指針に「働きやすく、働きがいを実感できる組織風土を目指します」という言葉がある。当社も「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を目指しており、この2社が組むことでカルミアを起点とした豊橋の活性化が実現できるのではないかと思っている。この話はカルミアで働く従業員一人ひとりの方のいきいきしている状態を実現したいという想いから話が始まった。カルミアで働かれている従業員の方々は、テナントの本社が豊橋市ではない。従業員は会社からは離れた場所で働いているという状態であり、キャリア・職場・人間関係などいろいろな悩みを抱えている可能性がある。当社は600名以上の派遣スタッフを派遣しており、仕事に関する悩み事を聞くことに関してはプロである。豊橋ステーションビルと当社が組むことで、テナント従業員の方々の悩み事を聞いて、解決に向けた取組ができるのではないかということを今まさに議論し、開発を始めている。会社とは離れた位置で働いている方に対して、豊橋で働けばこういったサポートが受けられる、豊橋は働きやすい土地だという印象をもっていただければ最終的には豊橋で働いて住みたいと考えていただけるようになる、そうしたことが実現できるのではないかと思っている。こうした活動を通じて東三河を盛り上げていきたいと考えている。