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産学官民交流事業

2021.09.21 第443回東三河産学官交流サロン

    

1.開催日時

2021年9月21日(火)18時00分~19時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

愛知工科大学 学長 大西 正敏 氏

  ◎テーマ

『AUT教育におけるIoTとDX化の取組み』

  講師②

一般社団法人中部経済連合会 審議役・調査部長 笹野 尚 氏

  ◎テーマ

『豊橋地域の地域発展戦略の選択肢について
        ~SWOT分析の手法を用いた試論~』

4.参加者

67名(オンライン参加 18名含む)

講演要旨①

「愛知工科大学」(AUT:AICHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY)は、三河の自然に恵まれた学びの環境の中にある。愛知・三河地区は、日本の製造業の中心地であり、製造品出荷額は1976年以降、連続44年日本一である。愛知工科大学(工学系大学・学部)の特色は、「学生を変える大学」「ものづくり人材育成」を重要視し、確かな土台(総合力・実践力)と優れた職能(設計力・製作力)を併せ持ったモノづくり人材の育成を目指している。「AUT教育」とは企業と連携した実践的教育であり、具体的には企業との連携研究・共同研究、企業トップ人による特別授業、1年次からのインターンシップ、日本初のIoTモノづくりコース(専攻コース)がある。
本学工学部には、ものをつくる「機械システム工学科」コントロールする「電子ロボット工学科」、ネットワーク化する「情報メディア学科」の3学科があり、学科横断型の特別選抜コース教育である「IoTモノづくりコース」を開設し、あらゆるものがインターネットにつながる、いつでもどこでも「見える化」の実現を目指している。工業界でのIoTは、あらゆるモノに「センサ」を搭載し、さまざまな情報を「クラウド」に送信。蓄積されたデータを「AI」などによって分析し、人やモノに「フィードバック」して新たな価値を創出している。授業では、仮想工場ラインを設置し、学生主体でIoTを活用して改善に向けたデータの「見える化」ができる装置の開発に取り組んでいる。
DX(Digital Transformation)の定義は、文書や手続きを単に電子化するだけではなく、ITを徹底的に活用することで、手続きを簡単・便利にし、蓄積されたデータを政策立案に役立て、国民と行政、双方の生産性を抜本的に向上することである。身近なDX化には、買い物に行くという「行動」を完全にIoTを使ってデジタルに置き換えた「amazon」があるが、教育現場ではGoogle Meetやzoomによるリモート授業、Webポータルによる授業案内、Google Classroomによる授業配信、Webオープンキャンパスなど、手段としてのDX化が加速している。授業の復習がいつでもビデオで出来るので、伸びる学生はすごく伸びている。これは、対面ではなかったことである。また、蒲郡市からの委託を受け、学生による地元企業のPV(プロモーションビデオ)制作などの授業演習も行っている。
Z世代(デジタルネイティブ)は、動いたものを見た方が、理解力が高い。企業紹介やイベント等を動画で体験できるコンテンツは、広報誌・カタログに代わり今後ますます多くなる。大学のWebオープンキャンパスは一例だが、全世界的にリモートでの実体験化が急加速する。今後、5Gの普及(6Gも準備段階)により、ユビキタス的に動画の閲覧環境は飛躍する。動画の活用は、さらにDX推進に拍車をかけることになる。経済産業省は、「2025年の崖」「DX実現シナリオ」をユーザ企業・ベンダー企業等産業界全体で共有し、政府における環境整備を含め、諸課題に対応しつつ、DXシナリオを実現するとしている。また、もう一つの世界の流れに「SDGs」(持続可能な開発目標)がある。
大学教育は、「IoT」と「DX」を手段として使っている。企業の皆様には、そういう目で学生を見ていただきたいと思っている。

講演要旨②

豊橋地域の地域発展戦略の選択肢の候補について、「SWOT分析」の手法を用いた試論をお話しさせていただく。私は、豊橋地域の個人的な勉強会に参加しており、その成果を活用している。
まず、「豊橋市の産業別特化係数」を説明させていただく。「特化係数」とは、地域内の特定の産業がどれだけ特化しているかを示す係数である。「主要な極めて高い業種(特化係数が全国の2倍以上)」は、プラスチック製品製造業、輸送用機械器具製造業(うち、自動車・同付属品製造業)、協同組織金融業、電気機械器具製造業、非鉄金属製造業、鉄鋼業である。また、「主要な高い業種(特化係数が全国平均以上)」は、繊維工業、自動車整備業、その他の製造業、食料品製造業、農業、生産用機械器具製造業である。次に「豊橋地域の特徴」として、都市、気候、歴史、企業、大学、インフラ、文化・観光資源、温泉、工芸品、食文化、スポーツ、音楽など、各分野でさまざまな「強み」を持っている。
これらを基に、「SWOT分析」により地域発展戦略の選択肢の候補について考える。分析のフレームワークとしては、積極戦略(S×O:今後の可能性・チャンスに、地域の強みを活かして挑戦する戦略)、差別化戦略(S×T:今後の脅威があり、他地域も手を引く可能性があるので、地域の強みを活かして徹底した差別化を行うナンバーワン戦略)、改善戦略(W×O:今後の可能性・チャンスがあるのに、地域の弱みがネックになっているので、それを改善してチャンスをつかむ戦略)、致命傷回避・撤退縮小戦略(W×T:今後の脅威やリスクがあるのに、地域の弱みが災いして、危険な状況になっている。それを打開するための戦略)がある。
豊橋地域のStrength(強み)、Weakness(弱み)、また外部要因であるOpportunities(機会)、Threat(脅威)をピックアップし、掛け合わせたところ、次の戦略が考えられる。
積極戦略(S×O)として、①アグリ・フード分野での創業・イノベーション・新産業創出、②農業分野でのIoTやAi、ドローン等先進技術の活用、③農業や食品分野での循環型社会の構築、④食や健康産業などの「健康長寿産業」の振興と、健康寿命の長さによる地域イメージの向上、⑤人材・企業誘致やスタートアップの誘致・振興、⑥市民の環境意識の高さや地域産業の強みを活かしたスマートシティ地域づくり、⑦グリーン分野での創業・イノベーション・新産業創造、⑧環境負荷の低いモビリティシステムづくりや観光MaaSへの取組み、などが挙げられる。
また、改善戦略(W×O)として、①IT人材・IT企業・ITスタートアップの誘致・振興、②デジタルDMO事業(ITを活用したターゲット毎の観光振興戦略の実行)の推進、③ウェブシステム活用を前提としたインターナショナルスクールの「分校」誘致、④外部人材を活用した、地域の魅力の発掘・アピール、人材・企業誘致のためのシステムづくり、などが挙げられる。
差別化戦略(S×T)として、①豊橋技術科学大学と地域企業、スタートアップ人材の産学連携システムをさらに強化し、既存企業による新規事業開発やスタートアップの振興を図る、②豊橋技術科学大学と連携した、IT分野のリスキリングの抜本的強化やサイバーセキュリティの強化への取組み、③愛知大学大学院をさらに地域戦略研究のメッカとし、外国人留学生を増やす、などが挙げられる。
致命傷回避戦略(W×T)として、地域を挙げて、南海トラフ巨大地震対策(社会インフラ、住宅、事業用施設の耐震化・水害対策、住宅地におけるエネルギー自給3日分の確保など)が挙げられる。
既に取り組んでおられる施策が多くあるが、機会や脅威の変化により、新たな取組みを加えたり、取組みそのものを強化する必要性が出てくるケースがあるかもしれない。「SWOT分析」は、誰かが「たたき台」を作って、複数で議論すると戦略案が浮かび、認識の共有も進むため、ワークショップ等のテーマにすることも有効である。また、戦略案は定期的な見直しも必要である。