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産学官民交流事業

2021.12.22 第446回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2021年12月22日(水) 18時00分~20時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

豊橋技術科学大学大学院 機械工学系 教授 内山 直樹 氏

  テーマ

『システム工学の産業応用』

  講師②

ブルーイノベーション株式会社 ソリューション営業部 山口 雄大 氏

  テーマ

『社会インフラを支えるドローンの活躍と未来への可能性』

4.参加者

80名(オンライン参加者 6名含む)

講演要旨①

「システム工学」とは分野横断的な学問であり、機械、電気、情報、社会などの全ての分野で使っていただけるもの。色々な現象を数学的にモデル化(数理モデリング)して、それを使って最適化、制御することが基本となる。システム工学の中では「最適化」が最も重要であり、本日は「最適化」の産業応用についてお話しさせていただく。
最適化問題の例として、「巡回セールスマン問題」がある。近い順に訪問するよりも、効率よく訪問する最適解がある。本例の場合の最適化問題の構造は、目的(評価)関数として「移動距離を最小に!」、変数(変えられるもの)として「移動順」、拘束(制約)条件(変えられなもの)として「すべての家を訪問、一度ずつ訪問」というように、問題を定式化して、解き方を検討するというパターンになる。これは、ロジカルシンキング、三段論法、SWOTなどと同じような考え方の一つであり、思考制御の枠組みと捉えている。配偶者の選び方における最適化手法を確立することを目的とした東京大学機械工学科の新井民夫教授の『配偶者の選び方に関する工学的考察』が参考になるのでご紹介させていただく。
産業機械への応用例として、「半導体ウェハ搬送ロボットの最適制御」では、目的として「移動時間を最小に」、変数として「モータ指令値」、制約として「モータ性能、衝突回避、振動抑制」を掲げ、定式化して、各種ツールを使って最適解を出した。「大型クレーンの最適動作軌道生成」(コベルコ建機株式会社様)では、目的として「移動時間を最小に」、変数として「油圧モータ指令値」、制約として「クレーン特性、油圧モータ性能、衝突回避、振動抑制」を掲げ、豊橋技術科学大学のシステム工学研究室にクレーンのモデルを設置し、実証実験を行うというプロジェクトも実施している。「産業機械の省エネルギー動作」については、目的として「エネルギーを最小に」、変数として「加速時間」、制約として「台形速度軌道、総移動時間と移動量(面積)は変えずに」を掲げて実験を行ったところ、加速時間を変えるだけでエネルギーがかなり減少することが分かった。興味のある人は是非トライしてみて欲しい。「バッテリーローダー」(浜名エンジニアリング株式会社様)では、ガントリークレーンへの応用として、目的として「エネルギーを最小に」、変数として「加速時間」、制約として「台形速度軌道、移動量(面積)は変えずに、停止時の振動(残留振動)なし」を掲げて実験を行ったところ、加速と低速の時間を振動の倍数にすると残留振動が全くなくなることが分かり、省エネルギー化と振動抑制を実現することができた。
「屋外清掃ロボット(Miimo)の開発」(トーヨーメタル株式会社様)では、境界線の信号を検出すると方向転換してランダムに芝を刈るMiimoについて、目的として「時間/距離/エネルギーを最小に」、変数として「移動経路」、制約として「全領域を被覆、ロボットの動作特性(横に動けない)」を掲げた実験、また「堆積物自動搬出システムの構築」(レンテック大敬株式会社様×トーヨーメタル株式会社様×豊橋技術科学大学)では、堆積領域認識、最適搬出位置決定、自動搬出について、目的として「高さ、近さ、堆積の状態などを総合的に評価」、変数として「搬出位置」、制約として「ショベルの特性・状態」を掲げた実験を行い、最適化を求めている。
「ロボットによる複雑な木材形状加工(×8)」(宮川工機株式会社様)では、視覚センサーによるロボット動作の自動校正について、目的として「ロボットの動作指令値とカメラの測定位置の最小化」、変数として「ロボットの各部寸法など」、制約として「ロボットの構造」を掲げ、補正有無でのツール先端誤差の比較を行うなどの共同研究を行っている。また、「ワイパー動作軌道の最適化」(株式会社デンソー様)では、ワイパー動作でのオーバーランを低減、その他「多目的最適化」などの取り組みも行っている。
システム最適化には幅広い応用がある。工学とは「与えられた境界条件内での最適化体系」であり、定式化(目的、変数、制約の明確化)が重要である。現在は、多くの解法があるので自動的に答えが出てくるという流れになる。ハードウェアを変えずに、産業機械、ロボットのソフトウェアを変えることで高性能化を実現している。

講演要旨②

ブルーイノベーション株式会社は、日本唯一のドローン・ロボットのインテグレータである。東京大学とともに日本で初めてのドローンを活用した海岸モニタリングシステムを開発した経緯もあり、現在ドローン事業を展開している。また、ドローンだけでなく、ロボットを通じた顧客の課題解決も推進している。事業内容は、複数のドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのベースプラットフォームであるBlue Earth Platform(BEP)をベースに5つのソリューションを開発提供している。本日は、その中の「プラント・工場・水道インフラDXソリューション(スマート点検、3Dモデル化など)」についてご説明させていただく。
弊社は、世界最大のドローン業界団体「JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)」を運営している。現在、日本では会員数が17,000名以上を誇っている。ドローンを活用した安全ガイドラインの策定に携わっており、首相官邸にドローンが墜落したことをきっかけとして法律改正に寄与した。また、操縦者・安全運行管理者の資格証明書交付ということで、全国に先駆けてドローンの「認定スクール制度」を導入し、全国で240校以上のスクールを運営しており、17,000名以上のドローンのパイロットを輩出している。
2021年度のドローンの市場は国内で2,000億円規模であり、盛り上がりの傾向を示している。もともとドローンは「農業、測量、空撮」の分野で発展し、現在は「点検」の分野がホットになっている。今後の市場としては、「物流」「輸送」の分野における活用が期待されている。
工場・プラント点検には、①危険作業、②目視検査による膨大な作業コスト、③労働力不足、④点検作業の属人化、という4つの課題がある。これらの課題に対し、ドローンを導入するメリットとしては、①安全性の向上、②作業効率の向上、③コスト削減、④予兆保全が挙げられる。
しかしながら、ドローン導入には不安や失敗があり、点検場所や施設にあわせた「機体選定」による「安全確保」が非常に重要である。ドローン点検が出来る場所・対象施設と機体選定のポイントとしては以下の通り。
●屋内点検(タンク・ボイラー内部、高所、配管・ダクト、狭小空間、煙突内部)
※機体は、「ELIOS 2」。非GPS環境下では一般的なドローンは飛行不可。センサーで自動制御しつつ、安定飛行が可能な機体を使用。
●屋外点検(タンク、施設外壁、煙突、屋根、ソーラーパネル)
※機体は、「Matriceシリーズ」。GPSを搭載し、ホバリングしながら撮影できる機体を使用。点検内容に合わせたデバイスの選択も重要。
●水中点検(給水・排水管、上下水道管、桟橋、船底、浮体式生産設備)
※機体は、「Fifish V6」。有線ケーブルは200m程度必要。カメラ部分を水面に出せる機体であれば点検の幅が広がる。
屋内、屋外、水中におけるエリア別点検事例を紹介する。「煙突内部(高さ150m×内径4m)」は、約2時間で内壁全体をスクリーニング撮影できる。「タンク・ボイラー」は、上空からの全体俯瞰撮影が可能となり、防爆エリア外から安全に撮影できる。「配管・下水道」は、配管の外から安全に点検でき、点検時間が2日から4時間に短縮され、有毒ガスのリスクも排除できる。「工場・屋外外壁」は、上空からの全体俯瞰撮影が可能となり、赤外線カメラなど搭載機材を変えることでさまざまな点検に対応できる。「桟橋・橋梁」は、天候に合わせて任意のタイミングで点検が可能になる。また、ソフトウェアの開発による非GPS環境下における「解析・3Dモデル化」も実現している。
ドローン点検の導入方法は、「自社でドローンを購入(もしくはサブスク)して運用する」と「その都度、業者に委託する」という大きく2つに分けられる。運用の柔軟性、コスト、パイロット手配・育成、機体メンテナンス、各種申請業務などの各種要件があり、導入の際は弊社にて協力させていただく。
労働人口減少、働き方改革が求められる中、Blue Earth Platform(複数のドローンやロボッ、各種デバイスを遠隔・目視外で自動制御・連携させることができるブルーイノベーション独自のデバイス統合プラットフォーム)により、人の業務を自動化するコア技術の開発に取り組んでいる。