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産学官民交流事業

2026.1.20 第495回東三河産学官交流サロン

 

1.日 時

2026年1月20日(火)18時00分~20時30分

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

愛知大学 経営学部会計ファイナンス学科 教授 冨村 圭氏

  テーマ

『地域金融機関の現状と課題
 ~地域企業の挑戦を支援し地域経済を成長させるためには~』

  講師②

(株)ゼンリン エリアソリューション本部エリア戦略部 部長 手嶋 侑斗氏

  テーマ

『どのように社会的価値と収益拡大を両立するか』

4.参加者

53名(オンライン参加5名含む)

講演要旨① 
 本日のテーマは「地域金融機関の現状と課題」である。私は2025年3月までRIETI(独立行政法人経済産業研究所)のプロジェクトメンバーを務めており、そちらにおける研究結果の一部を紹介する。内容は、RIETIのホームページでディスカッションペーパーとして公開されていて2年間議論しながら作り上げたものであり、どなたでも閲覧可能である。
 今回ご紹介する内容は、基本的にアンケート調査をまとめたものである。その特徴は、地域金融機関の営業店舗の支店長を対象にしている点である。一般的なアンケートは、金融機関の本部にアンケートを送る場合がほとんどであるが、今回は各支店の支店長に直接アンケートを依頼したところが特徴である。支店長7,000人を対象に調査を行い、2,516人から回答を得て、回収率は35.9%であった。これは、我々の分野では20%を切る回答率のアンケートも多い中では比較的高い回収率となっており、統計結果には一定の信頼性があると考えている。調査期間は2023年11月から12月の間であった。第2の特徴として、調査を継続している点がある。2017年、2019年にも同様の調査を実施しており、3度目の調査としてそれらと比較できることが大きな特徴である。内容は一部アップデートしているが、コアな部分は比較可能となっており、どのように変化してきたかが考察できる。今回のアンケート調査の趣旨は、地域金融機関の課題についての調査である。具体的には人事制度、事業性評価、顧客関係に関する質問などに加え、コロナ禍を経て支店長の意識や行動に変化が生じたかも質問の中に含めている。支店長の年齢、経験、意識、若手社員、支援の効率化、デジタル化、脱炭素化、経営者補償の内容、信用保証協会との関係性など幅広く質問しており、質問項目は34問となっている。かなり量が多く多岐にわたるため、回答いただいた支店長の皆様にはかなりご負担をおかけしたと思っているが、こうした多岐にわたる内容のため、得られた結果も多様なものになっている。これを全部説明することは難しいので、本日はポイントを押さえて話をする。
 調査票を発送した7,000店舗は、金融庁に登録されている国内の金融機関の中から「銀行」「第二地銀」「信用金庫」「信用組合」という業態と、全国を「北海道・東北」「関東・甲信越」「中部」「近畿・北陸」「中国・四国」「九州・沖縄」という6つのブロックに分け、偏りのないようランダムに抽出し、営業店舗の支店長宛にアンケートを送付した。2,516件の回答の内訳を見ると、「銀行」「第二地銀」「信用金庫」「信用組合」の割合に偏りはなかった。また、金融機関の規模を見る場合、預金量が一つの基準になるが、5,000億円~3兆円未満の規模の金融機関で約半数を占めていた。
 回答者の年齢については、50歳代が最多で50.6%を占めており、続いて40歳代が42.4%であった。40歳代が2017年調査で49.2%、2019年調査で52.0%であったことから、一つの解釈として、支店長に昇進する時期が若干遅れていると考えられる。仕事へのやりがいについては、「非常に強く感じる」が17.9%、「強く感じる」が60.5%となっていた。しかし、この合計が、2017年調査では87.9%、2019年調査では85.3%、今回は78.4%であり、背景等の分析は必要であるが減少傾向を示している。業態別に推移を考察すると、信用金庫は2017年調査で88.6%、2019年調査で84.3%、今回が73.6%であった。信用組合は2017年調査で81.3%、2019年調査で80.7%、今回72.9%となっており、信用金庫・信用組合の支店長で減少傾向が顕著であったが、「少し感じる」を加えると9割を大きく超えており、全体としては高い「やりがい」を持っている方が多数であり、「やりがい」が失われているわけではなく、レベルとして高い中でのトレンドの話である。入社の時の意識として、「地元のために働ける」という意識に関しての質問においては、「強く感じていた」「ある程度感じていた」の合計が77.2%であり、2017年調査の74.3%とほぼ同様の結果であった。ここから支店長になる方でも、入社時は4分の1が地元のために働くことを意識していなかったことが考察される。次に入社してからいろいろな経験を積んでいく中で、「地元のために働ける」意識がどう変化したかという質問に関しては、「強くなった」が54.7%と半数以上であった。2017年調査においては、「強くなった」が63.5%であったことから、「地元のために働ける」意識は若干低下傾向であった。「地元のために働ける」意識が強くなった理由に関しての回答は、「取引先から資金供給で感謝されたことがあるから」が77.2%で最多であった。次いで、「取引先から資金供給以外の経営支援で感謝されたことがあるから」が62.0%、他に、「地域の人々からの期待を感じるから」が48.6%となっており、2017年調査結果と比較しても、支店長が地元志向を強める要素は変わっていない。
 若手の離職が問題となっているが、「若手職員に成功体験を伝えられているか」という質問について、「強くあてはまる」「ある程度あてはまる」の合計は全体で82.7%であった。こちらも地方銀行の「強くあてはまる」「ある程度あてはまる」の合計が90.6%であったのに対し、信用組合の「強くあてはまる」「ある程度あてはまる」の合計は71.2%と業態により差異が見られた。若手の退職への認識に関する質問として、「若手職員の退職が増えているか」という質問において、「強くあてはまる」「ある程度あてはまる」の合計は全体で68.4%であった。地方銀行の「強くあてはまる」「ある程度あてはまる」の合計が64.6%であったのに対し、信用金庫の「強くあてはまる」「ある程度あてはまる」の合計は80.5%となっており、こちらも業態により差異が見られた。全体では、支店長の認識として若手の退職が増えているという認識を持つ方が多かった。次に、コロナ禍を経て職員の能力の変化状況に関する質問の回答としては、「かなり向上」が2.8%、「やや向上」が35.2%、「横ばい」が50.3%であった。コロナ以前の2017年調査の「かなり向上」「やや向上」の合計が43.2%、2019年調査の「かなり向上」「やや向上」の合計が60.1%であったため、コロナ以前の調査よりも、職員の能力に対する評価は厳しいものになっている。その要因として、コロナ禍により対面のOJTの機会が減少した影響もあるのではないか考えられる。
 昨今、地域金融機関も含めた金融機関への期待として、預金受け入れや融資だけではなく幅の広い形で顧客の経営支援をすることが求められている。こうした中で「コンサルティング」がキーワードになっており、「コンサルティング」の有効性について質問している。回答では「コンサルティング」の有効性が高まっており、取引先の経営改善につながっている。また、前回調査と比べて比較可能な項目がすべて上昇しており、金融機関の助言や情報精度が高まっていると思われる。「コンサルティング」の有効性として、金融機関の収益にどのように結びついているかを質問しているが、基本的には収益の拡大につながったという回答が多い。具体的に有効であったものとして、「不動産の取得や借入」「既存不動産の活用」「新しい販売先の開拓」の回答が多く、これらが有効であった内容として認識されていた。また、税理士など外部の専門家とも連携しながら顧客の経営支援にあたっていることも確認できた。しかし、平均的な営業担当者目線での回答では、顧問税理士や会計士との強い連携関係を築けている金融機関は僅かであった。支店長目線で同じ質問に回答いただいているが、支店長クラスの方が顧問税理士や会計士と連携関係が強い。しかし、組織として制度化されるまでには残念ながら至っていない状況であった。
 最後に人事評価の項目について話をする。人事評価については国も含めて重視されてきており、評価とそれをどのように報いるかを合わせて考えていく必要がある。コロナ禍発生前後における人事評価の変化の状況について質問の回答は、変化が「あった」が34.6%、「なかった」が60.0%であった。金融機関のみならず人事評価の基準が時代で変化しており、金融機関の場合は単純に量を追い求めるのではなく、質的な面も含めた「定性的な要素」のポイントが高まっている。今回は「定性的な要素」の導入やウェイトの引き上げをしているとの回答が2017年調査から約9%伸びて49.2%となり、特に第二地銀が顕著であった。地域金融機関に限れば、人事評価のあり方が「定性的な要素」をより重視する方向になってきている。職員の業績評価のウェイトの状況であるが、「非常に重要」と回答されたものとして、「コンプライアンス」が54.2%、「新規貸出先の獲得および新規先への貸出額」が40.6%、「部下の指導・育成」が34.3%である。2017年調査との比較については、「コンプライアンス」が約3%減少、「新規貸出先の獲得および新規先への貸出額」が約10%減少したが、「部下の指導・育成」は約5%増加しており。「定性的な要素」の業績評価にウェイトが移行している傾向が見られた。
 最後に紹介するのはノルマ廃止に関する評価の質問に対する回答についてである。ノルマ廃止に対する評価として、「支店の目標達成が難しくなる」との回答が45.8%、「職員にとって、どのように頑張れば評価されるのかわからなくなる」との回答が41.5%、「じっくりと腰を据えた業務が可能になる」との回答が41.1%と続いた。全体として、「前向き」の平均選択率が31.0%、「後ろ向き」の平均選択率が32.6%となっており、ノルマ廃止に対して懸念を示す回答の方が多かった。業態別では、地方銀行は「前向き」な回答が多く、信用組合は保守的という傾向があった。
 今回の調査の目的は、これらが金融機関の良し悪しを断ずることではなく、まずは現況をしっかりと捉えることにある。なかなか知ることができない現場の意識を把握し、地域経済が厳しくなる中で、金融機関が地域の企業に伴走し、資金だけでなく情報も提供しながら共に支えていくといった役割が重要になっていくと思っている。

講演要旨②
 本日は、「どのように社会的価値と収益拡大を両立するか」というテーマについて話をする。話のアジェンダとして「当社の会社紹介」→「当社の目指す地域共創」→「社会的価値と収益拡大の両立」→「課題と対策」→「まとめ」といった順番で話をしていく。「パーパス経営」や「ESG投資」といった言葉が一般的になり、企業には単なる利益追求以上のものが求められる時代となっている。こうした中で、「地方創生」でも「地域創生」でもなく、当社が掲げている「地域共創」というコンセプトにおいて「社会的価値」と「収益拡大」を両立として、いかにして具体的なビジネスとして成立させ、同時に地域の課題を解決していくのか、その一端を説明できればと思っている。
 当社は1948年に大分県別府市で創業し、1961年に設立された起源は別府温泉を観光するための案内を製作する会社であった。創業者が観光案内の裏面についているマップが、運送業者などから非常に役に立つという声を聞いて、地図の事業にシフトしていった。その後カーナビゲーション用や携帯電話用のデータ作成を経て、3Dデータや高精度のロボット向けデータなどに取り組んでおり、直近では地域課題の解決の領域に注力している。地図提供の会社から、地理空間情報サービス企業への変革を目指している。物販のモデルであった会社のビジネスを、データベース及びアプリケーションのサービス会社に変えていく取組を行っている。地図をサービスの観点でみると、これを構成する空間情報群として、「ビルの場所」「テナント情報」「交差点の名前」「一方通行の場所」などすべてがデータベース化されており、いつでも取り出せるようデータ管理していることが当社の特徴である。自動車用・歩行者用ネットワークデータを整備して日本国内を網羅し、そのデータを常に更新している。デジタルツインと呼ばれるようなデータを使って何かを管理・分析したいといったマーケットが広がるほど当社の役割も増すため、プラットフォームの役割を担っていきたいと考えている。資本金は約65億円、2025年3月期の連結売上高は643億円を超え、グループ全体で約3,500名の体制で運営しており、北九州と東京に本社を置き全国に75カ所の営業・調査拠点を展開している。この「全国に拠点がある」ということが、私たちの地域共創ビジネスにおいて非常に重要な意味を持つ。また、海外にも拠点や子会社を持ち、グローバルな視点での位置情報サービスも展開している。
 当社の社訓は「友愛」「奉仕」「創造」の3つである。『ひとりひとりの「友愛」がもたらす平和がなければ地図は作れない。』『地図を作ることができれば、世の中の役に立ち、「奉仕」につながる。』『「友愛と奉仕」によって、地図情報の基礎を築き、未来を「創造」する。』の意味であり、とても良い言葉だと思っている。日本の各拠点において、収益が厳しい地域もあるが、全体として成長軌道に乗せていくことを考えた場合、あらためて創業の精神に立ち返り、地域空間情報が必ず役に立つ価値を持っていると信じて「地域と共に、“笑顔”の未来を創る」というスローガンを掲げて取り組んでいる。これまで地域の拠点は営業拠点であり、顧客に商品やサービスを紹介し購入いただくような活動をしてきた。それが本当に地域の課題解決になっているかを考えた場合、当社の商品サービスメニューにない場合はこれまで解決できていなかった。商品サービスメニューがない場合、それを創っていくため地域の自治体・企業・金融機関などと一緒になって問題・課題の発見から伴走し、解決策の検証にも積極的に関与し、事業化を進めるというやり方に変わってきている。例えば、「まちづくり」における課題感があるものに対して、合理的にデータ上で説明するためには統計データなどのサンプルを集める必要があり、取得にコストがかかる。こうした場合に、当社の持つ空間情報を提供するといったものがある。他のテーマとして「観光」「地域交通」「流通・サービス」「防災・減災」「教育」など多くの分野が考えられる。地域によって異なる事情もあり、自治体・企業・金融機関などと一緒になってチャレンジしている。
 ここから社会的価値と収益拡大をいかに両立するかについて話をする。山口周氏が提唱する「経済合理性限界曲線」では、皆が求めていて簡単に解決できるものは一番ビジネス性が高いが、参入者が多く競争領域になる。難易度の高い課題については、技術革新が進めば解決できる内容も増えてビジネスの領域が広がっていくとされている。そして同氏は、「合理性の限界を超えた場所にこそ、本当の価値や幸福がある。人間や社会はもっと意味や美しさ・納得感に意識を向けるべき。経済合理性限界曲線の外側にこそ、イノベーションでしか生み出せない新しい価値や成果がある。」と述べている。しかし、社会課題を解決するビジネスの開発において、地域企業・自治体・金融機関とのコラボレーションを行っても、事業収入を生まなければ持続的な課題解決はできない。そのために規模の経済から範囲の経済へ転換すべきというのが当社の考え方である。ワンソースマルチユースの考え方として、すでに持っている地域空間情報や配信できるクラウドの基盤を地域という範囲に用いることにより、ユニークなビジネスを創造できると考えている。
 事業収益を生むためには、「事業戦略の共有」「ビジネスモデル基盤の構築」「実行のための組織機能設計」が必要であり、当社社内で取り組んでいる。これまでの業務をそのまま継続しながら新しい業務を始めても、現場に負担がかかり持続できない。そこで、既存事業の効率化とセットで実施することが重要である。その上で当社が、ワンソースマルチユース、範囲の経済として取り組む中で多くの問題が発生した。特に個別のサービスや個別案件のテストケースなどすべて別々のサーバーに都度作成しており、ワンソースマルチユースとなっていないことが判明した。これを受けて当社は、統合型のアプリケーション開発環境として再度整理・設計をして、範囲の経済に対応する戦略としている。また、現場の声を適切に反映できるよう社内プロセスの設計を現在進めている。こうしてこれまでの「営業の拠点」から、「地域とのリレーションを作るチーム」「企画を作成するチーム」「顧客に共感・伴走する価値提案営業チーム」「既存業務の効率化チーム」と組織設計も変更して拠点の運営を進めている。
 こうした中で発生した主な課題を紹介する。最初は、従来の業務プロセスからの脱却がとても難しいということである。組織で長く続いてきたものをいきなり変えることはほぼ無理であり、業務の棚卸、構造化を行い課題プロセス特定、定量評価を行ってコミュニケーションを粘り強く継続的に取りながら改善に取り組むしかないと思っている。次に、範囲の経済で収益を上げるために多くの用途を生み出すことが事業戦略上重要であるが、実際にビジネスを作ることが難しいという点である。地域連携に主体的に取り組むことができるソリューション、マーケティング人材の育成や獲得が残課題と考えている。最後の課題は、前の2つと共通する面もあるが、意識改革やリスキリングである。ビジネスモデルが変われば、当然求められる知識やスキルも変わるが、これを変えることが難しくコストもかかる。継続的に戦略共有を図った上で学習機会を作り取り組んでいく。
 最後になるが、当社の目指す「地域共創」とは、激変する社会環境下において社会的価値と収益拡大を両立するために、①社会的価値を持続的価値と捉え取り組む、②そのために収益を生む共通モデルを構築する、③既存の活動も合わせて棚卸し、取組の時間を作るという3つのステップである。当社は、特に②において共通のアプリケーション開発基盤が収益モデルの鍵を握っている。皆さんの企業においても、地域課題を解決する時にここで収益を上げると狙うポイントがあると思う。今、私が実務を行う中において、③についても非常に重要であることを感じている。従来の業務、新しい業務に取り組むのはどちらも人であり、負担が増えればいつか不満が爆発してしまう。これまでの業務の中でやらなくて良いものとセットにすることが大切である。本日はこの3点を皆さんと共有した上で、当社は地域にビジネスのチャンスがあると思っており、それは地域独自の経済圏や名産品、特徴のある土地建物など地域の価値があると考えるからである。経済合理性やグローバルといったマクロでみると難しいと思えることも、東三河という範囲で考えれば取り組む余地があると思っている。その時に当社の持つ空間位置情報というデータベースが役に立てる部分が必ずあると考えている。当社の持つ地域空間情報のデータベースは唯一無二のものであり、先程話をした地域の課題解決にチャレンジするために用意した統合型基盤構築によるビジネスモデルで横展開することにより、ある程度開発コストを抑えて取組可能な前例を創っており、これらを通じてぜひ皆様と一緒に事業開発をしていきたい。