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産学官民交流事業

2025.3.18 第485回東三河産学官交流サロン

1.日 時

2025年3月18日(火)18時00分~20時30分

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

豊橋創造大学 保健医療学部 理学療法学科 助教 塚田 晋太朗 氏

  テーマ

『災害後のリハビリテーション医療活動と災害関連死の予防』

  講師②

一般社団法人ほの国東三河観光ビューロー マーケティングディレクター 田中 三文 氏

  テーマ

『インスタグラムによる情報発信の実践』

4.参加者

50名(オンライン4名含む)

講演要旨① 
 理学療法士の業務は多岐にわたり、病院や施設以外にも、地域在住高齢者の健康増進や介護予防、オリンピック・パラリンピックのアスリート支援、行政などに従事していることもある。病院や施設では、医師、看護師、薬剤師、他のリハビリテーション専門職など、様々な役割の医療従事者と連携しながら、チームとして患者様の生活機能の維持・向上を支援している。医師は、健康状態つまり病気や怪我を治す役割を担っているのに対して、リハビリテーション専門職種は、健康状態の悪化によって生じた基本動作や日常生活活動の低下を改善する役割を担っている。
 近年では毎年のように地震や水害などの災害が起きているため、常に災害への備えを意識しておく必要がある。過去の震災における人的被害の原因は二つに分けられ、ひとつは、地震や津波、土砂崩れなど、災害そのもののハザードによって直接的に命が奪われる「直接死」であり、もうひとつは、発災後の避難生活やその後の生活において持病の悪化や生活不活発病(廃用症候群)などが原因で亡くなる「関連死」である。過去の震災では災害関連死の割合が半数を超えている場合があり、その被害を低減する必要がある。
 災害関連死は、避難所、病院、仮設住宅といった場所で起こり、その原因は持病の悪化、生活不活発病(廃用症候群)などが挙げられる。災害関連死は様々な要因が複雑に絡み合って起こる。例えば、避難生活におけるストレスや衛生環境の悪化、服用していた薬の不足などが持病を悪化させる可能性がある。また、日常生活で使用していた道具(歩行補助具や装具)がない、住居環境が大きく変わるなど、生活環境の劇的な変化が日常生活活動への悪影響や精神的な負担となることがある。他にも、外に出られない、通所リハビリやデイサービスが利用できなくなるなど、身体活動の機会や近隣コミュニティーとのつながりが失われることで孤立感や喪失感が深まり、心身の健康に悪影響を及ぼし、生活不活発病(廃用症候群)が進行しやすくなる。これらの要因が複合的に作用し、災害関連死のリスクが高まる。リハビリテーションの視点から考えると、これらの要因の中でも特に重要なのが災害による「環境因子」の劇的な変化である。住み慣れた自宅のバリアフリー環境から、段差が多い体育館のような避難所へ移ることで、今まで何とかできていた移動が困難になり、ベッド上で過ごす時間が増加してしまう。それにより体力の低下や持病の悪化につながり、生活不活発病(廃用症候群)の発症という悪循環を引き起こす。このように、新たに病気を発症したわけではなく、「環境因子」の変化によって健康状態が悪化してしまうケースもある。
 災害発生後には、被災地に対してDMAT(災害派遣医療チーム)やDPAT(災害派遣精神医療チーム)、JMAT(日本医師会災害医療チーム)など、様々な災害医療支援チームが派遣されている。私が所属しているJRAT(日本災害リハビリテーション支援協会)は東日本大震災後に組織化され、リハビリテーション科の医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職種などで構成されている。主な活動として、避難所や被災地におけるリハビリテーション医療の提供、生活不活発病の予防、避難所環境の整備などを行っている。私が熊本地震や能登半島地震で派遣された際には、避難所環境の評価と整備、基本動作が困難な避難者に対する段ボールベッドの導入や手すりの設置といった個別対応、避難テントに閉じこもりがちであった避難者の運動介入、他の災害医療支援団体との連携などを行った。
 災害への備えについて、東三河地域の人口動態をみてみると、奥能登地域よりも高齢化率が高い自治体が存在しており、また、豊橋市や豊川市といった比較的高齢化率が低いように見える地域でも要介護者の絶対数が多いため、潜在的な災害時要配慮者が多いことがわかる。今回、東三河地域の要介護者を対象に行った調査では、災害備蓄や避難行動計画を準備している割合が低く、ハザードマップや最寄りの避難所を把握していない対象者も一定数認めた。他にも、歩行や立ち上がり動作に物的・人的介助が必要な方が多く、避難所における物的支援のニーズは想定以上に高い可能性があることが示唆された。災害への備えは地域や個々の状況によって大きく異なるため、画一的な対策ではなく、個別性の高い避難計画の策定が重要である。
 今後は、これまでの災害医療支援の経験や東三河地域における調査結果を踏まえ、より支援が必要なターゲットを明確にした効果的な支援策を様々な業種の方と進めていきたいと考えている。 

講演要旨② 
 私は大学を卒業後、観光・レジャーなど集客産業の出版社に入社して、観光・集客ビジネス関連書籍の編集、ツアーの企画コーディネートなどを担当し、全国、海外を含め各地の観光・集客施設の現地調査・取材を進めてきた。その後、中部国際空港開港、愛・地球博を契機とした中部の観光振興に携わるため、名古屋の民間シンクタンクに入社し、観光計画・観光振興戦略・外国人受入環境整備・集客施設開発調査等に携わってきた。シンクタンク在籍中には、昇龍道プロジェクトの立ち上げに関わったほか、中部地方各地の外国人受入環境整備事業業務等にも携わった。2022年10月から地元に戻り、愛知県東三河広域観光協議会{現:(一社)ほの国東三河観光ビューロー:地域連携登録DMO}のマーケティングディレクター(CMO)として東三河の観光振興を進めている。また、同時に個人活動の場として旅人総研を立ち上げ、各地での講演・執筆・撮影・アドバイザー業務等の活動もしており、SNS配信では、所属先のインスタグラムを毎日更新するほか、中央日本総合観光機構のアカウントにおける投稿などのアドバイザーを行っている。
 ほの国東三河観光ビューローは、東三河の広域観光団体であり、東三河8市町村の観光の魅力をまとめてブランディング化するとともに、魅力を分かり易く伝えてプロモーションし、東三河の観光周遊促進とそれによる地域内消費拡大から地域の活性化につなげる活動をしている。いわゆるマーケティング、ブランディング、プロモーションといった活動をすべて行っていて、本日の話の中心となるインスタグラムによる情報発信も、私自身が毎日投稿をしている。
 観光情報入手先の変化と今として、観光客が求めている情報発信のあり方について最初に話をする。2007年に初代アイフォンが発売され、18年経過した現在ほとんどの方がスマートフォンを所有している。結論としては、今の観光情報の入手元はほぼインターネットであり、ほぼスマートフォンであり、ほぼ全ての世代がそうであるというのが今の観光情報入手の実態である。よっていかにここに届けるか、いかにスマホに情報を届けるかが鍵となる。もちろん観光情報が新聞に掲載されればインパクトがあり、「新聞見て来ました」といったことは必ずあるが、あらゆる世代の人が継続的に見ているスマートフォンの画面に、情報をいかに届けるかということを私は常に意識している。
 ほの国東三河観光ビューローのプロモーション方針の検討をしていて、東三河のことが知られていない、東三河の観光イメージが乏しい、東三河在住の多くの人もその魅力に気がついていないという問題を認知した。この解決のために、東三河のことを知らせる、東三河の観光イメージに気づかせる、東三河の人に魅力を伝えるためにまずは足元からの情報を発信することとして、そのための効果的な最適手段を考えた。そこでマーケティングとして、①東三河75万人マーケット、②愛知県内750万人マーケット、③遠州地域100万人マーケットにおいて、ターゲットとなる年代層を40~50代ミドル層、60代以降アクティブシニア層として、安定的かつ確実な東三河のファンづくりのための最適な手法がインスタグラムであると考えた。というのは、インスタグラムは、10年前ぐらいまでは若い人がやるメディアなので、一般的な観光情報発信はふさわしくないといったこと言われた時期もあったが、現在は主流となる30代、40代、50代の人へユーザー層が順調に拡大しているからである。総務省の統計においてインスタグラムの利用率が7年前25%であったものが56%へと伸びていてユーザーも増えている。また写真が投稿のメインとなるため、YouTubeのような動画編集の技術や手間も不要で、簡単に投稿できる。こうした理由に加えて、手軽なオウンドメディアであり、画像でダイレクトに観光地の魅力を伝えられること、即時性・即効性・拡散力に優れていること、コスト対効果(広告含む)に高さもあり、安定的かつ確実な東三河のファンづくりの最適な手法がインスタグラムであると考えた。
 また、インスタグラムへの投稿の特徴としては、①登録無料(審査なし)~基本は画像の投稿+文字(コメント)、②動画のアップも可能(リール、ストーリーズ)、③フォローしていないとフィード(ぺージ)には上がってこない、④関心度の高い投稿、関連性の高い投稿が上位表示 ※アルゴリズム基本は時系列で表示されている、⑤複数枚数は20枚まで(※複数枚投稿は2トップで。再閲覧は2枚目がトップ表示)、⑥#ハシュタグ検索が可能(#は30個まで)※効果は薄くなっている、⑦時間指定投稿が可能、⑧ストーリーズは動画60秒、静止画5秒程度(音楽を入れて長くすることは可)※リンクが貼れる、⑨リール動画は最大90秒、⑩画像に文字載せは可(各種ソフトあり)といったものがある。
 ほの国東三河観光ビューローのインスタグラムは私が担当となった2年前はフォロワーが980人であった。そこから現在フォロワー数は1万人を超えており、愛知県内の観光協会では非常に多い方になってきており、何とか名古屋観光コンベンションビューローを抜いて愛知県内1位にしたいと思っている。また、フォロワー数以上に重要なのが閲覧数であり、どれだけの人が毎日見てくれるかが私の基準である。現在平均閲覧率は82%であり、1万人のフォロワーがいて、8,000人が見てくれている。ちなみに先日アップした名豊バイパス開通後の投稿は、閲覧数17万を記録した。また、豊橋市に雪が降った日の市電の写真などがすごく閲覧率が高くなった。これは私のマーケティングでもあり、この閲覧の数と反応の速さが東三河に求められているものではないかと思っている。もうひとつインスタグラムの面白い機能としてフォロワーに対してのアンケート機能がある。先日の名豊バイパス開通の際にアンケートを行い、1日で219人から回答があり名豊バイパスへの関心の高さを測り知ることができた。
 インスタグラム運用ノウハウとして私が実践していることは、①アイコン/シンボルとなるプロフィール写真の選定、②150字のプロフィールの内容の精査、③スマホ1画面くらいを想定した投稿フィールドの充実、④多すぎず少なすぎない適切な投稿頻度、⑤写真や内容が魅力的でコンセプトに沿った統一感のある価値ある情報発信、⑥ストーリーズも時々投稿、⑦毎朝6時に毎日発信といったことである。特に⑤については、フォロワーが何を求めているか十分考えた上で、花、季節もの、イベントや祭りなど足で稼ぐ旬な話題、朝・昼・夕方・夜と多彩な姿を見せる観光地の風景、改めてベーシックな観光資源紹介、イベントや祭り予告PRなどこれから起こること、災害・天候・通行止め・事故等の緊急情報などを1週間・1か月を想定したローテーションによる発信を意識している。加えて持続的に取り組んでいけるように、担当別割り当てによる負担減、効率化の工夫もしている。私は、東三河観光のことは自分が1番詳しくなければならないと考えて、月に2から3回は東三河を巡り、情報や話題の収集と現場マーケティング、現地ウォッチングをして各地とのネットワークやつながりづくりを心掛けている。1か月以上放置されているインスタグラムは、逆にネガティブキャンペーンとなってしまうので、運用されている皆さんは、ネタを見つけて頑張って更新していただきたいと思う。
 但し、ほの国東三河観光ビューローの情報発信・プロモーション方針で重視しているのはインスタグラム単体だけではなく、WEBサイト、パンフレットなどの各種ツール、展示会やキャンペーン等でのPRなど数珠つなぎのメディアミックスである。そこにおいて、基本かつ重要となるのは、誰に向けて、何のために、何を伝えたいのかであり、トータルでのPR戦略である。大切なことは、マーケティングの感覚を日々持ち続け、観光客×ニーズ×情報サービスを意識してどこの誰にどうやって情報発信をするのが最も効果的かを常に考えることである。そのため、目指しているのはフォロワー数獲得だけではない。目指しているのは東三河のファンづくりであり、常に東三河のことに関心を持ち続けてくれる安定的ファンの獲得である。インスタグラムではリーチ数&エンゲージメント率を注視し、そのための投稿の工夫として価値ある投稿を続けることを心掛けていて、閲覧数/アカウント閲覧率/保存率/エンゲージメント率を常に指標として確認している。また、インスタグラムの特徴として、投稿に“いいね”をくれた人は、そこに行きたい人が多く、その人が実際にその場を訪れて情報発信してくれるという二重の効果がある。フォロワー(ファン)を増やすためにやっていることは、地道な毎日の投稿(欠かさず毎日)、重要なプロフィールの作成、価値ある投稿として足で稼いだ情報の発信、フォロワーが求めている旬な情報の発信、決まった時間での投稿(毎朝6時)などあるが、様々なところでインスタ告知をして、いわゆるフォロー周り(フォローしてほしいアカウントをフォロー)も欠かさず行っている。また、経費は少し必要であるが、インスタグラム広告も実施後明らかにフォロワーが増加した結果であったため、起爆剤となると考えている。
 こうした活動をしてまだ2年であるため現在道半ばであり、3年から5年かけて東三河の観光ブランドが拡がれば良いと考えている。東三河の75万人の人も魅力に気づいてない地域資源がまだ多くある。例えば新城市の桜渕公園の桜は皆さん知っていると思うが、その少し奥に市川の桜という素晴らしい場所がある。こちらは隠れた集落といった雰囲気があり、私は奥三河のマチュピチュと勝手に呼んでいるすごく良い桜の里である。こうしたものを伝えて、東三河の人にその素晴らしさに気づいてほしいと思っている。というのは、まず足元である東三河の人が東三河の魅力を知らない限り、西三河や尾張、遠州にもその魅力が伝わらないと考えており、それを意識して今後も活動を進めていく。